2010 年 51 巻 1 号 p. 31-38
教員養成大学・学部の教育研究は,多くの問題点を抱えている。特に,中学校教員養成課程は,教科に力を持った有為な教員を養成してきていたか,その姿を変えてしまった。また, 大学院への進学者は入学定員ギリギリにとどまっている。大学院が魅力ないことが明らかである。理科の教員を養成する理念は, 4年制の大学への入学者が同世代の50%をこえた今も戦後発足の当時と変わらず「理学部的な教育」と同じ内容を教えれば良いとしているのではないか。その背景には,教員養成学部の教員が教員養成学部独自の学間と教育を生み出そうとしない姿勢が強く存在することがある。換言すれば教貝養成学部のアイデンテイティの確立を目指していないのである。このような状況になった根本原因は,国の高等教育政策において教員養成大学・学部を他学部の従属関係に置く政策がある。特に,文部科学省がいわゆる「在り方懇報告」に基づき進めた学部の統合再編策により.教員投成学部の教員は「教員養成は斜陽産業」と思う傾向が強まり,教員養成の充実から逃避するきっかけとなってしまった。国は優れた教員を養成することが国の基盤であることを理念とし,教員養成に自信を持って立ち向かうような環境を整えるべきである。