2011 年 52 巻 2 号 p. 85-93
本研究は,国家や州により策定されたカリキュラム(意図されたカリキュラム)と実際の授業(実施されたカリキュラム)の分析を通して,オーストラリア・ヴィクトリア州の前期中等科学教育の特色を明らかにすることを目的とした。その際,生態系の学習を取り上げ,カリキュラムが実際の授業にどのように反映されているのか,また,教師が意図したカリキュラムを解釈し,どのような考え方で授業を組み立て展開しているのかを分析の視点とした。その結果,ヴィクトリア州では,国のカリキュラムの基本的枠組みを維持し,州や学校の実情や文脈に対応した州や学校のカリキュラムが作成され,授業が展開されていることが明らかになった。また生態系の授業では,科学的知識や科学的な活動におけるスキルを獲得し育成させること,環境教育に関して,環境に配慮できる市民育成の重要性を認識し,環境問題等の理解を深め,解決策を模索させること等を教師が重視していることが明らかになった。