2012 年 52 巻 3 号 p. 67-75
中学校および高等学校の学習指導要領の改訂により,中学校の理科では新単元「生物の変遷と進化」が導入され,また,高等学校の「生物」においては生物の進化の仕組みについて学習することが示された。現在,中学校および高等学校における進化に関する教材開発は喫緊の課題といえる。そこで,本研究では身近に生息しているセトウチフキバッタParapodisma setouchiensisを材料として,進化に関する教材化のための基礎研究を行った。その結果,本種の色形質が阿武川という地理的障壁を境に分かれていること,体のサイズは標高が高くなるほど小さくなることが明らかになった。このことから,本種は地理的変異,地理的隔離,種分化,適応(自然選択)などの進化に関する学習において活用可能であると考えられた。