理科教育学研究
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52 巻, 3 号
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原著論文
  • 石井 俊行, 橋本 美彦
    2012 年 52 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,中学生に「フェルマーの原理」を学習させることの効果を明らかにすることを目的に行った。その結果,以下のことがわかった。1) 「フェルマーの原理」を「光は最短時間の経路を通る」ということを考え方の基底として学習させることは,中学生にとっては難解ではなく,学んだことに対して「おもしろい」と思い,「参考になった」と感じている生徒が多い。2) 「フェルマーの原理」を学ばせることは,特に「点から照射された光の屈折」の場合の「空気中→水中」や「水中→空気中」の問題を解決する上で効果的である。3) 「フェルマーの原理」を学習した生徒の約30%は,「フェルマーの原理」を根拠として,「光の屈折」という現象を捉えており,それらは必ずしも理科学力が高い生徒ではない。これらのことにより,中学生に「フェルマーの原理」を学習させることは,彼らに科学に関する基本的な概念の定着が図られる有効な1つの方法であるといえる。

  • 板橋 夏樹, 大高 泉
    2012 年 52 巻 3 号 p. 11-21
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    新学習指導要領においてエネルギー概念を主要な内容の系統化の1つとして示したが,この概念は中学第3学年で導入されるために小学校での学習内容をエネルギーという用語に関連づけて扱うことが難しい。一方,米国では,小学校低学年からエネルギー概念を導入している。そこで,本研究では米国小学校の教科書と教師用指導書を事例に,エネルギー概念を小学校段階でどのように導入しているのかを分析した。その結果,以下のことが明らかになった。(1) これらの教科書では,全米科学教育スタンダードや各州のスタンダード等に基づき,児童が直観的に理解できる光,熱,音等を題材としたエネルギー概念及び定義を低学年から導入している。(2) エネルギーの定義保存形態移動の概念,及び,位置エネルギーや運動エネルギーの概念は第3学年以上の各学年で繰り返して取り扱われている。(3) 教師用指導書は指導すべき内容を7つの観点に分けて提示,さらに生徒への発問例を例示するなどして,指導の水準の質を保つ工夫をしている。

  • 岩間 淳子, 鳩貝 太郎, 松原 静郎, 小林 辰至
    2012 年 52 巻 3 号 p. 23-31
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    生命観育成及び生物多様性の理解は,理科教育の重要な目標であり,その基盤となる自然体験や体験的学習と生命尊重の指導の必要性が指摘されている。看護を専攻する学生に対しても,生物に関する科学的知識を深め,生命観を育成し生命倫理教育を実践していくことは重要であると考える。本報では,大学生に「動物の発生」に関する観察・実験の経験を調査すると共に,看護を専攻する学生に対して,大学基礎科目の中で「動物の発生(魚)」の授業を行い,学生の「生命」に対する考え方,及び生命倫理の育成に必要と考えられる科学的知識,生命観,生物多様性の理解等を調査・分析し,生命倫理教育のあり方を検討した。その結果,次のことが明らかになった。(1) 小学校理科「動物の誕生(魚)」におけるメダカの受精卵の観察は約50%で行われていたが,実際に発生の過程が観察できていたのは学生の約20%に過ぎなかった。(2) 大学基礎科目で行った「魚の発生」の授業では学生全員(100%)が,体験的学習を通して得た科学的知識に関する記述をしていた。(3) 学生全員(100%)が生命誕生の不思議さ,命の大切さ等の生命観に関わる記述をしていた。(4) 学生の約80%が人と魚の発生,及び体の構造や機能の共通点と相違等の生物多様性に関する記述をしていた。以上の結果から,「動物の発生」の授業は看護を専攻する学生に対する生命倫理を考えさせる上で有効であったと考えられる。

  • 榎阪 昭則, 廣木 義久, 大仲 政憲
    2012 年 52 巻 3 号 p. 33-41
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    スーパーサイエンスハイスクール指定校において,課題研究に対する生徒の満足度とその満足度に影響を及ぼしている要因および,課題研究の継続・非継続に影響を及ぼしている要因について調べた。その結果,課題研究に対する生徒の満足度を高めるためには,生徒がやりたいテーマについて研究できたと思えるような指導をすること,生徒が良い研究結果・成果が得られたと思えるような指導をすること,生徒が教師の指導が良かったと思えるようにすることが必要であることが分かった。また,生徒が課題研究を継続して行いたいと思うようにするためには, 自分のやりたいテーマについて研究できたと思うこと,課題研究をすることにより自然科学や科学技術に対する関心が高まったと思うこと,課題研究が自分たちにとって必要な科目であると思うこと,が必要であることが分かった。以上の結果を踏まえ,課題研究に対する生徒の満足度を高め,かつ,生徒が課題研究を継続して行いたいと思えるような指導モデルを提案した。そのモデルには,研究の指導に加えて,課題研究の実施前に課題研究の必要性を説明すること,研究テーマの設定時にテーマのおもしろさや意義見通し等を説明すること,研究終了時に研究の成果や意義,学問的位置づけ等を説明すること,が含まれている。

  • 小川 博士, 松本 伸示
    2012 年 52 巻 3 号 p. 43-53
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,オーセンティック・ラーニングに依拠した理科授業が科学的知識の理解に与える効果を明らかにすることである。この目的を達成するために,オーセンティック・ラーニングに関する先行研究を省察し,理科授業実践のための観点を導出した。そして,導出した観点に依拠した理科授業実践を行うことで,科学的知識の理解が促進したか否かを検証するために,小学校第6学年の児童161人を対象として,単元「ものの燃え方」において授業を行った。その結果,観点に依拠した理科授業を行うことによって,燃焼に関する科学的知識の理解の促進に効果が見られた。また,導出した観点には実践可能性があると判断した。

  • 神崎 弘範, 西川 純, 久保田 善彦
    2012 年 52 巻 3 号 p. 55-66
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,生徒が実験をする際に,理想的な測定値を記入したプリント(理想値プリント)を用意し,生徒がそれを自由に参照できるようにする授業を設定した。この授業において,生徒はどのような学びを展開するのかについて,理想値プリントの使用状況・使用目的・使用効果・必要性を視点として分析した。その結果,次のことが明らかとなった。生徒は,理想値プリントを積極的に使用するが,その使用時間帯は,実験開始以降であることが多く,始めから答えとなるような測定値を得ようとはしない。生徒は,主に自分達の結果が正しいのかどうか確認することを目的として理想値プリントを使用している。生徒は,理想値プリントを使用することで, 自分達の測定値についての確認を行い,測定値が大きく異なっていると判断した場合には,適切な値となるよう再度実験を行う。生徒は理想値プリントを用いて測定値についての確認をすることで,測定値に対する不安が解消され,その後の学習が進めやすくなると感じている。生徒は,理想値プリントがある方がよいと考えている。その理由としては,測定値と理想値を比較することで,測定値の確認ができ,より正しい結果に向けて実験のやり直しができたり,測定値が適正である場合には, 自信を持って学習が進められたりすると考えている。

  • 佐伯 英人, 谷脇(河村) ゆう子, 川上 靖
    2012 年 52 巻 3 号 p. 67-75
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    中学校および高等学校の学習指導要領の改訂により,中学校の理科では新単元「生物の変遷と進化」が導入され,また,高等学校の「生物」においては生物の進化の仕組みについて学習することが示された。現在,中学校および高等学校における進化に関する教材開発は喫緊の課題といえる。そこで,本研究では身近に生息しているセトウチフキバッタParapodisma setouchiensisを材料として,進化に関する教材化のための基礎研究を行った。その結果,本種の色形質が阿武川という地理的障壁を境に分かれていること,体のサイズは標高が高くなるほど小さくなることが明らかになった。このことから,本種は地理的変異,地理的隔離,種分化,適応(自然選択)などの進化に関する学習において活用可能であると考えられた。

  • 佐伯 英人, 土屋 圭子
    2012 年 52 巻 3 号 p. 77-87
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    これまで成長段階に「蛹のある昆虫」と「蛹のない昆虫」の両方を卵期から成虫期まで飼育・観察し,児童の意識の変容について議論するといった実証的な研究はみあたらなかった。そこで,本研究では,「蛹のない昆虫」としてエンマコオロギを選定し,「蛹のある昆虫」としてモンシロチョウを選定して教材とした。この2種の昆虫の飼育・観察を卵期から同時に始め,児童の発言・観察記録質問紙調査の結果を基に分析・考察した。その結果,エンマコオロギとモンシロチョウともに飼育・観察の過程で,児童の生きものに対する見方が変わったり,児童の意識が変容したりしたことが明らかになった。また,「愛情•愛着」と「学習意欲」のそれぞれにおいて,エンマコオロギとモンシロチョウの得点の変化の仕方に違いがみられ,飼育・観察をして得られる教育効果が必ずしも同じではないことが明らかになった。さらに,本研究で得られた知見を基にエンマコオロギの飼育・観察を行う意義について議論した。その結果,生物を愛護する態度を育てられること,児童が自らの意識の変容に気付くことが考えられた。

  • 佐伯 英人, 森脇 勇太
    2012 年 52 巻 3 号 p. 89-101
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    小学校学習指導要領の改訂により,第6学年の理科では新単元「電気の利用」が導入された。文部科学省の小学校学習指導要領解説理科編には,蓄電したコンデンサに発光ダイオードと豆電球をそれぞれ接続し,両者の点灯時間を比較する実験が例示されている。教科書・教師用指導書の記載内容を調べ,その教材実験の追試結果等をもとに議論した結果,次の①~③が明らかになった。① 手回し発電機を使って蓄電したコンデンサを発光ダイオードや豆電球に接続しても,発光ダイオードや豆電球が点灯しない場合がある。とくに,教科書・教師用指導書に示されている条件で実験しても発光ダイオードが点灯しない場合がある。② 発光ダイオードが点灯し始める(手回し発電機の)回転数付近で実験を行う場合, コンデンサへの蓄電終了時の操作が,結果に影響を及ぼす可能性がある。③ 教科書・教師用指導書によっては,手回し発電機の回転速度を一定にするための方法,蓄電終了時の操作,点灯・消灯の判断,予備実験時の確認事項について記述されていない場合がみられた。そこで,蓄電したコンデンサが発光ダイオードと豆電球を点灯させる条件(手回し発電機の回転速度,回転数)を調べる予備実験の方法を検討・提示した。これをもとに,小学校教員を対象に予備実験の方法に関する実技研修会を行った結果,参加者からは概ね良好な評価が得られ,研究内容が教育現場へ還元できるものであり, また,提示した予備実験の方法・手順が有効であることが示された。

  • 斎木 健一, 天野 誠, 林 延哉
    2012 年 52 巻 3 号 p. 103-111
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    教員が簡単に野草の名前を調べることのできるウェブサイトを開発するために従来の野草検索方法の問題点を分析した。小中学校教員を被験者に,野外観察で植物の検索形質がどのように認識されるか調査したところ,誤認の様式は次の3つに大別されることが明らかになった。1)相同性認識の誤り:色のついた葉を花弁と誤認することや,複莱を単葉の集合と誤認することのような形態学的に誤った認識に起因する誤りのこと。植物は動物に比べ可塑性が高く,異なる器官がよく似た形態を示すことが多いので,こうした誤認を引き起こしやすい。2) 視認性不良による誤り:器官が肉眼で観察するには小さすぎることや,他の部分に覆われるなどして視覚による確認が不十分となるために起きる誤り。たとえば断面が三角形の茎の場合,切断せずに三角形であることを視認することは困難である。3)適切な選択肢の欠落による誤り:選択肢を判別の容易な数に絞ったため,葉の形態のように多様性が大きすぎる場合に一部の形態に対して適切な選択肢を用意できなかったために起きた誤り。以上三つの誤認様式をふまえ,こうした誤りをおこさない工夫を加えた野草検索ツールとして,新たなウェブサイトの開発した。

  • 鶴岡 森昭
    2012 年 52 巻 3 号 p. 113-120
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    現行の高等学校化学教科書25 種類(化学Iの16 種類と化学I の9種類)に掲載されている実験課題510件を,実験課題の分析手段であるLAI (A Laboratory Structure and Task Analysis Inventory) を用いて分析した。さらにその分析結果を現行の高等学校物理教科書16 種類(物理Iの9種類と物理Ⅱの7種類)に掲載されている実験課題229件の分析による結果と比較検討した。その結果物理の実験課題が抱えている「計画と設計」段階の「仮説の設定」「疑問の明確化」などの探究の端緒となる実験スキルを生徒に求める機会が乏しいという問題点は,化学の実験課題においても共通した問題点であること等が明らかにされた。さらに,この分析に基づき,「探究活動」を指導する方策などが提案されている。

  • 中林 健一, 小八重 宏樹, 横山 育生
    2012 年 52 巻 3 号 p. 121-129
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学において,現職の公立小中高校教員に対し色素増感太陽電池の作製指導を行った。その結果,色素増感太陽電池は,学校種に関係なく容易に作製できることが判明した。色素増感太陽電池の教材化を目的として,作製上の工夫や課題等について研修に参加した小中高校教員に対しアンケート調査を行った。色素増感太陽電池の作製指導は,教員の太陽電池に対する理解と興味関心が高まるばかりでなく,導電性ガラス,色素,酸化チタンなどの理解と利用に役立つことが判明した。研修後教育現場で,色素増感太陽電池を授業で活用した教員は,小学,中学,高校と学校種が上がるに伴って高くなることが明らかとなった。

  • 益田 裕充, 倉澤 友梨, 清水 秀夫
    2012 年 52 巻 3 号 p. 131-141
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,理科授業における問題解決の過程に沿って, IRF発話連鎖構造分析を試み,熟達した教師が用いたデザインベースの特徴を明らかした。I(Initiation) として「教師の働きかけ」で教師は,<質問•発問:プロセス誘発>や<質問•発問:選択誘発>を用い,子どもの考えを揺さぶり,さらなる問いを生み出したり,子どもの考えを広げ,知のネットワークを創造したりする機能を持たせた。反対に,結果・考察時の指示の多さが子どもの考察を一般化させる阻害要因となっていた。R (Reply) として「子どもによる応答」で教師は,子どもの〔自発〕く反応>を受け入れることで,子どもの考えをクラス全体へと広げようとした。自発発話とその取りあげ方が授業デザインを左右したことが分かった。F(Feedback) として「教師によるフィードバック」で教師は,く評価:促し>やく評価:認可>,<評価:再誘発>,<復唱>を用い,子どもの考えをクラス全体に引き出し,子どもの発話を促し,子どもの個々の考えを深め知のネットワークをより強固なものとする機能を持たせていた。

  • 森本 信也, 高井 英俊, 長沼 武志
    2012 年 52 巻 3 号 p. 143-155
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    理科学習における「学習状況に応じた動機づけ(situated motivation)」と子どもの科学概念構築との関連を明らかにした。これらの要因は児童•生徒が協同的に学習を進める上で、自らの問題提起(choice)、課題に対する考えの提示(challenge)、考えに対する同意、反論、補強(control)から構成された。これらの要因が児童•生徒により計画される学習、パフォーマンス・アセスメントの下、自己調整学習を授業としてデザインを図る際の要素として機能することを実証した。

  • 森本 信也, 松尾 健一, 辻 健
    2012 年 52 巻 3 号 p. 157-166
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    児童•生徒がテキストから意味を抽出し、科学概念へ変換させるために必要とされる要因を分析した。この課題を検討するために、キンチ(Kintsch,W.) による学習モデルを援用した。この学習で、児童•生徒はテキストから意味を抽出する活動(テキストベースによる学習)、次いでテキストから読み取った内容を既有の概念により再構築し、新しい概念として記憶していく(状況モデルによる学習)のである。このモデルによる理科授業をデザインし、実践した結果、テキストを詳細に読み取り、その成果を科学概念として構築する活動が現れた。

  • 山谷 洋樹, 鈴木 誠
    2012 年 52 巻 3 号 p. 167-178
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,生命観測定尺度を用いて,生命観を構成する生物概念及び生命概念の下位概念間の構造やそれらの関係を明らかにすることを目的とする。小学校6年生及び中学校2年生の児童生徒を対象に,測定尺度を国内の広い範囲で実施した。クラスター分析の結果,生物概念では,先ず推測と客観的知識がクラスターを形成し,次に機械論が結び付くことが示された。生命概念では,先に価値と命,次に擬人化と生気論がクラスターを形成し,これらクラスター同士が結合したものにアニミズムが結び付くことが示された。児童生徒に内在する思考に基づいた生命観の階層構造が明らかとなった。空間的位置関係を検討するため多次元尺度構成法を行った結果,座標軸を境にして生物概念と生命概念は別次元に配置され,機械論とアニミズムは,生物概念と生命概念の各下位概念とは座標軸を境にして別次元に配置されることが判明した。下位概念間での相関分析の結果,学年が上がると推測は他の概念と相関が強まり,同様に,機械論とアニミズム,価値と命の相関も強まることが示された。価値,命はそれぞれ,擬人化,生気論,推測とも相関が強くなり,獲得した知識が増すごとにそれらを応用し,生き物を情意的に捉えていることが示された。したがって,中学校2年生の方では,生物概念と生命概念の関係が増すため,その2つの概念が両輪となって生命観を形成していくことが明らかとなった。

  • 吉山 泰樹, 小松 武史, 稲田 結美, 小林 辰至
    2012 年 52 巻 3 号 p. 179-190
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では, A社の小学校の理科の教科書に掲載されている必修の全ての観察・実験等を対象として,それらに含まれるプロセス・スキルズの傾向により類型化し,その特徴を明らかにすることを目的としてクラスター分析を行った。その結果,以下のことが明らかになった。(1) 観察・実験等は,以下の4つの群に類型化された。•第2クラスター:事象の変化・性質・構造・因果関係等の記載を行う観察・実験群•第4クラスター:変化する独立変数とそれに伴う従属変数の変化との関係を見いだす観察・実験群•第3クラスター:独立変数を制御し,従属変数の変化を定性的にとらえる観察・実験群•第1クラスター:独立変数を制御し,従属変数の変化を定量的にとらえ,解釈する観察・実験群(2) 第3学年の観察・実験等は,単純な事象の変化に気付かせる等,基礎的なものが多いものの,中には独立変数と従属変数の観点から見ると複雑な内容を含んでいる。(3) 第4学年の観察・実験等は,季節の変化に伴う事象の変化について,独立変数と従属変数の関係を見出す内容である。(4) 第5学年,第6学年は第4学年で習得した観察・実験技能を活用して,従属変数の変化を定量的にとらえ解釈する等,他の学年に比べ,より探究的な内容である。

資料
  • 菊地 洋一
    2012 年 52 巻 3 号 p. 191-199
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    学校現場における水質分析の内容を深めるために,デジタルカメラを検出器に用いる比色分析法について検討した。デジタルカメラの測定では,希薄な着色溶液でも長光路測定により高感度測定を行うことが容易である。このことを利用し,簡便にppbレベルの微量鉄の高感度測定を行う方法を確立した。本法を身近な河川水中の鉄の定量に応用し,良好な結果を得た。生徒が天然水の姿や科学計測の手法に興味を深めるような教材として,本法の活用が期待される。

  • 木田 真貴子, 清水 誠
    2012 年 52 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,生徒の考察する力を高めるためには,討論の方法を指導した上でグループ討論させることが必要であると考え,その効果を検証することを目的とした。討論の方法としては,討論時に役割分担として司会者を設定することとその役割を指導した。授業は,だ液の働きの学習で実施した。考察時に討論の方法を指導した群と特に指導しない群を比較した結果は,討論の方法を指導した群の方が自分の考えの根拠を明らかにした考察を記述することができた。討論の方法を指導することが,考察する力を高めることに有効であることが示唆された。

  • 吉田 安規良
    2012 年 52 巻 3 号 p. 209-223
    発行日: 2012/03/02
    公開日: 2021/06/30
    ジャーナル フリー

    小学校教員の理科の観察・実験についての知識・技能の修得を目指した講習を教員免許更新講習の1つとして開講した。講習は物質・エネルギー分野に特化し,小学校3・4年向けと5・6年向けのものに内容を分けて各1日開講し,それぞれ20人が受講した。受講生は,授業でよく行われている実験(教科書教材実験)とその準備・後始末を追体験しながらその背景にある基礎的な原理や実験準備方法等を再確認し,授業に取り入れる際の注意事項や教材実験の活用法について学んだ。受講生の大多数は,受講前の段階では各単元の指導に強い自信があったわけではなかったが(5段階評価で平均点3.1点),受講後には少なくとも体験した観察・実験教材の指導については自信をもったと自己評価した(5段階評価で平均点4.0点)。受講後に行った講習の内容・方法ならびに知識技能の修得に際しても4段階評価で3.5点を超えており全員から肯定的な評価を得た。時間超過もなく準備した内容のやり残しもなかった。開講規模,提供内容や所要時間についても今回のような日程に適したものであると判断でき,受講生が十分に満足したものを提供できたと評価できる。その一方で溶液の希釈や試薬調製(濃度計算)に関してや回路の性質についてもっと時間をかけて教えて欲しかったという声もあった。今回は取り扱っていない単元や「生命・地球」領域に関しても同様の講習を希望する声があった。限られた時間の中でこうした声に対してどのように答えるのかは今後の実践で解決しなければならない課題である。

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