抄録
現在,理科教育において「科学的な思考力・表現力」を育成することが重要な課題の一つとなっており,鈴木・森本の先行研究では,「科学的な思考力・表現力」の育成を目的として,4MAT システムの考え方を援用した理科授業デザインが示されている。本研究では,パフォーマンス評価を用いることによって,「科学的な思考力・表現力」の育成に有用である,理科授業デザインで示された各象限の学習活動を具現化できることが明らかとなった。
さらに授業実践の分析から,以下の知見が得られた。
(1)既有概念との関連付けや予想や仮説を立てる問題把握的学習は,実験前の概念を示す「概念地図法」,既有知識を記述する「オープン・エンドな課題」,実験計画を作成し結果の予想を行う「問題解決課題」のパフォーマンス評価により具現化できる。
(2)観察・実験結果を文章や図表で表現する分析的学習は,目的のために実験を遂行する「問題解決課題」,実験結果から図や表を作成する「プロセス評価課題」のパフォーマンス評価により具現化できる。
(3)話し合いや発表を通して共通感覚から常識を構築する共通感覚的学習は,グループや学級において話し合いや発表を行う「プロセス評価課題」,実験結果の解釈を説明して,解釈を比較・検討してまとめる「問題解決課題」のパフォーマンス評価により具現化できる。
(4)省察や概念の活用を行う知識活用的学習は,実験後の概念を示す「概念地図法」と,新たな問いを記述する「オープン・エンドな課題」,自らの学習活動を省察する「自己評価」のパフォーマンス評価により具現化できる。