理科教育学研究
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54 巻 , 2 号
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原著論文
  • ―中学校理科「電流」単元を事例として―
    稲田 結美
    2013 年 54 巻 2 号 p. 149-159
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,理科学習に対する女子の意識や態度の改善を目指し,諸外国の先行研究を参考に,「女子の興味や経験に基づくトピック」,「美的観賞を含む協同的な問題解決活動」,「想像的な記述活動」の3 種類の方策を考案した。そして,中学校理科「電流」単元の授業にそれらを具体化し導入した。その結果,女子の授業中の態度や理科学習に対する意識について,以下の5 点が明らかとなった。
    1) 3 種類の方策に対して,「楽しかった」と肯定的に捉える女子が多く,取り組み方も良好であった。
    2) 特に「美的観賞を含む協同的な問題解決活動」における「オリジナル電飾づくり」が女子の好感度が高く,強く印象に残る活動であった。
    3) 授業に複数導入した「トピック」と「記述活動」の中には,本単元の通常の授業進行における実験と比較して女子の好感度が高いとはいえないものもあった。
    4) 単元終了後に,女子の理科学習に対する意識は低下しなかったが,将来への理科の有用性を感じられなくなる傾向が見られた。
    5) 新たな方策を導入した本実践授業において,女子は概して「電流」単元の学習を楽しみ,その内容の面白さを感じていたものの,その理解については他の単元の学習内容よりも困難であることを表明した。
  • ―生物多様性及び生命の連続性の理解に向けて―
    岩間 淳子, 松原 静郎, 小林 辰至
    2013 年 54 巻 2 号 p. 161-170
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,中学校学習指導要領第2 分野「植物」に関連する領域を,昭和22 年試案から平成20 年改訂に至るまでの内容の変遷を調査した。また,昭和47 年から平成24 年までの中学校理科教科書「花のつくり」の内容を調査するとともに,大学生を対象に中学校理科第2 分野「花のつくり」で観察した植物に関するアンケートを実施し,植物教材を通した生物多様性と生命の連続性の理解及び植物教材の適切性について分析した。その結果,次のことが明らかになった。(1)平成元年以降の学習指導要領理科第2 分野「植物の体のつくりと働き」には「生命の連続性」に関する記述はなかったが,教科書においては「生命の連続性」に関する記述が見られた。(2)教科書の観察・実験で扱われる植物は,「アブラナ」「ツツジ」「エンドウ」であったが,実際の観察・実験では「アブラナ」「タンポポ」「エンドウ」が多く扱われていた。(3)平成24 年版理科教科書における「花つくり」の観察・実験で扱われている植物は,概ね春の観察に適していた。(4)アンケート回答者在学時都道府県を,サクラの開花日の4 月10 日の等期日線で分けて温暖地域と寒冷地域の出身者別に比較すると,観察に用いられた植物上位8 種については,統計上の有意差は認められなかったが,カラスノエンドウは温暖地域,寒冷地域の出身者で有意差が認められた。(5)学生の約55%が複数の植物を観察していたが,約45%は1 種類の植物または不明と回答しており,「生物多様性の理解」の観点で課題となると考えられる。
  • 加藤 伸明 , 定本 嘉郎, 賀原 一陽
    2013 年 54 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    公立中学校の生徒と教員養成系大学の学生に「力と運動」に関わる調査問題と概念地図を出題し,それぞれにどのような対応関係が確認できるのか調査した。その結果,「力と運動」の学習を行っていない中学生の概念地図は「力がはたらく」を上位ラベル,「力がはたらかない」を下位ラベルとし,物体の運動を日常生活での経験を踏まえて概念地図上に表記する傾向が認められた。一方,大学生は「力がはたらく」と「力がはたらかない」を上位ラベルとして力学概念を構成する傾向が確認され,特に科学的に妥当な概念を保持している可能性が高い大学生の場合,「力がはたらく」と「力がはたらかない」を中心的なラベルとし,運動の第1 法則と第2 法則に関わるラベルで分離して力学概念を構成する傾向が確認された。
  • 木下 博義, 山中 真悟, 中山 貴司
    2013 年 54 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,理科における小学生の批判的思考に焦点を当て,その実態を明らかにすることを第一の目的とした。さらに,小学生の批判的思考に影響を及ぼす要因構造を分析し,指導法考案へ向けての示唆を導出することを第二の目的とした。これらの目的を達成するため,小学校5,6 年生429 名を対象に,35 項目からなる質問紙調査を実施した。
    その結果,一つ目の目的に対して,児童の探究的・合理的な思考に比べて,反省的な思考や根拠を重視しようとする意識が低いことが明らかになった。また,二つ目の目的に対して,探究的・合理的に思考している児童ほど,反省的に思考したり,意見の根拠を重視したりしていることが明らかになった。
    これらの結果を踏まえ,児童の反省的な思考や根拠を重視しようとする意識を高めるためには,探究的・合理的な思考を培うような指導をすべきであるという示唆を得た。
  • ―土壌動物・種子散布の指導事例をもとに―
    塩俵 昂平, 安藤 秀俊
    2013 年 54 巻 2 号 p. 189-199
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は学校ビオトープを用いた自然体験活動の教育的有効性を明らかにすることである。自然体験活動の効果を検証するため,ビオトープを設置している北海道内の小学校でビオトープを利用した教育実践を行い,児童の自然に対する意識や興味・関心の変容について調査した。本論では筆者らが行った自然体験活動のうち「土壌動物」と「植物の種子散布」に焦点を当てた計2 回の実践について報告する。「土壌動物」に関する教育実践では,以下の3 点(1)土壌動物に対するマイナスイメージの改善,(2)土壌中に広がる生命の多さの実感,(3)土壌動物の役割,についての調査項目で意識が有意に向上した。また,「植物の種子散布」に関する教育実践では,以下の2 点(1)種子散布に着目したことによる植物や植物の種子への興味・関心の向上,(2)植物の生命力への感心,についての調査項目において有意差が認められた。さらに,児童の自由記述からも自然への尊重・愛護についての記述が増加する結果が認められた。
  • ―理科授業デザインを支援するためのパフォーマンス評価―
    鈴木 一成, 森本 信也
    2013 年 54 巻 2 号 p. 201-214
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    現在,理科教育において「科学的な思考力・表現力」を育成することが重要な課題の一つとなっており,鈴木・森本の先行研究では,「科学的な思考力・表現力」の育成を目的として,4MAT システムの考え方を援用した理科授業デザインが示されている。本研究では,パフォーマンス評価を用いることによって,「科学的な思考力・表現力」の育成に有用である,理科授業デザインで示された各象限の学習活動を具現化できることが明らかとなった。
    さらに授業実践の分析から,以下の知見が得られた。
    (1)既有概念との関連付けや予想や仮説を立てる問題把握的学習は,実験前の概念を示す「概念地図法」,既有知識を記述する「オープン・エンドな課題」,実験計画を作成し結果の予想を行う「問題解決課題」のパフォーマンス評価により具現化できる。
    (2)観察・実験結果を文章や図表で表現する分析的学習は,目的のために実験を遂行する「問題解決課題」,実験結果から図や表を作成する「プロセス評価課題」のパフォーマンス評価により具現化できる。
    (3)話し合いや発表を通して共通感覚から常識を構築する共通感覚的学習は,グループや学級において話し合いや発表を行う「プロセス評価課題」,実験結果の解釈を説明して,解釈を比較・検討してまとめる「問題解決課題」のパフォーマンス評価により具現化できる。
    (4)省察や概念の活用を行う知識活用的学習は,実験後の概念を示す「概念地図法」と,新たな問いを記述する「オープン・エンドな課題」,自らの学習活動を省察する「自己評価」のパフォーマンス評価により具現化できる。
  • ―「生成的学習モデル」を中心として―
    中島 雅子, 松本 伸示
    2013 年 54 巻 2 号 p. 215-223
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,「生成的学習モデル(generative learning model)」を中心に,構成主義に基づく概念の形成過程という視点から,授業論を検討することである。その理由は以下の2 点にある。1 つは,「生きる力」を育成するための授業を構想する際には「学習のプロセスとは既知と未知との葛藤を調節しつつ進行するものである」という学習観を中心とした議論が有効であると考えられるからである。もう1 つは,これまでは,学習論と授業論を結ぶ視点が不明確であったことである。「生成的学習モデル」は概念の形成過程に注目した先駆け的な学習モデルと考えられるものであり,授業論に活かす視点を明確にした形で提案された。
    ここでは,オズボーンらが注目した5 つの「三段階モデル」とそれに関連するオズボーンらが取り組んだ「理科学習プロジェクト(LISP: Learning in Science Project)の知見を中心に検討した。
    以上より,授業論で重視すべき点として,次の3 つを指摘した。第1 に,授業における「メタ認知」の育成である。第2 に,それは,授業において「学ぶ意味」や「学ぶ必然性」を学習者が感得することでなされると考えられることである。第3 に,授業において「反省的思考」を促すことである。
  • ―プロセス・スキルズを精選・統合して開発した「探究の技能」に基づいて―
    長谷川 直紀, 吉田 裕, 関根 幸子, 田代 直幸, 五島 政一, 稲田 結美, 小林 辰至
    2013 年 54 巻 2 号 p. 225-247
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,次の三つを目的とした。一つ目は,“Science-A Process Approach(SAPA)”のプロセス・スキルズを精選・統合して,我が国の理科教育に即した「探究の技能」を開発することである。二つ目は,小・中学校の理科の教科書に掲載されている観察・実験等について,新しく開発した「探究の技能」に基づいて類型化し,それらの探究的特徴を明らかにすることである。三つ目は,小学校と中学校の理科で培う「探究の技能」の接続の観点から,それぞれの観察・実験等の類型の関連性を明らかにすることである。得られた結果は,以下の通りである。
    (1) SAPA のプロセス・スキルズを精選・統合して,新たに「探究の技能」として7 つの上位技能と31 の下位技能を開発した。
    (2) 小学校の観察・実験等は,「探究の技能」に基づき探究的特徴のある5 つに類型化できた。
    (3) 中学校の観察・実験等は,「探究の技能」に基づき探究的特徴のある6 つに類型化できた。
    (4) 小学校の5 つの類型に含まれる観察・実験等は,分化・発展したり統合されたりして,中学校の6 つの類型と密接に関連していることが明らかになった。
  • ―地動説の優位性を実感する授業―
    福田 恒康, 大嶋 由加, 遠西 昭寿
    2013 年 54 巻 2 号 p. 249-256
    発行日: 2013/11/27
    公開日: 2013/12/12
    ジャーナル フリー
    天体の運行は天動説からも地動説からも説明できるので,生徒に地動説を実感して理解させるには,地動説が天動説より優位であることを理解させる必要がある。しかし,天体の日周運動などの観察事実は,天動説による説明の方が実感しやすい。生徒の疑問は,北天の星々の回転が自転の証拠であることにではなく,なぜ空の回転ではないのかにある。個々の観察事実は多様な説明が可能なので,天動説か地動説かの決定には個々の観察事実とこれらを説明する個々の理論との関係よりは,これらの理論どうしの関係の方がはるかに重要である。
    本研究では,同じ事実を天動説と地動説の両方で説明し,これら2 つの理論体系をコンセプトマップ法で表現することで,天動説では理論間の関係が希薄であるのに対して,地動説では理論どうしが全体として調和的関係を保つことから,地動説の優位性を認識させることを目的とした。生徒は「太陽の日周運動」,「星座の年周運動」,「季節の変化」へと学習が進むにつれて,天動説も地動説も観察事実を説明できることを理解しながら,理論体系の全体的調和性から,地動説に対するコミットメントを強めていく様子が,運勢ライン法などで確認された。
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