理科教育学研究
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原著論文
天体の運動に関するホーリスティックな理解
―地動説の優位性を実感する授業―
福田 恒康大嶋 由加遠西 昭寿
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2013 年 54 巻 2 号 p. 249-256

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抄録
天体の運行は天動説からも地動説からも説明できるので,生徒に地動説を実感して理解させるには,地動説が天動説より優位であることを理解させる必要がある。しかし,天体の日周運動などの観察事実は,天動説による説明の方が実感しやすい。生徒の疑問は,北天の星々の回転が自転の証拠であることにではなく,なぜ空の回転ではないのかにある。個々の観察事実は多様な説明が可能なので,天動説か地動説かの決定には個々の観察事実とこれらを説明する個々の理論との関係よりは,これらの理論どうしの関係の方がはるかに重要である。
本研究では,同じ事実を天動説と地動説の両方で説明し,これら2 つの理論体系をコンセプトマップ法で表現することで,天動説では理論間の関係が希薄であるのに対して,地動説では理論どうしが全体として調和的関係を保つことから,地動説の優位性を認識させることを目的とした。生徒は「太陽の日周運動」,「星座の年周運動」,「季節の変化」へと学習が進むにつれて,天動説も地動説も観察事実を説明できることを理解しながら,理論体系の全体的調和性から,地動説に対するコミットメントを強めていく様子が,運勢ライン法などで確認された。
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© 2013 日本理科教育学会
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