抄録
教員は研修によって常に自己の指導力を向上させることが求められるが, 研修によって教員が技術や知識を獲得するだけでなく, 授業で活用できる実践力を向上させることが重要である。そこで, 本報告では工夫された研修の受講によって教員がどのような理科の指導力への意識を高めることができるのかを, 研修の前後に質問紙調査をおこなうことによって明らかにした。高等学校の理科教員を対象にした研修会では, 授業に即した実験教材を利用した模擬授業を実施し, 教員が探求の過程を体験できるような工夫をおこなった。また, 小・中学校の教員を対象にした研修会では, 金属の発熱と回路の関係について教員が探究的に実験をおこなって発泡スチロールカッターの製作をおこなった。これらの研修会での調査結果から, 授業に即した実験教材を工夫することや適切な発問をすることの大切さなど理科のさまざまな指導力を向上させることの意義等を参加教員に意識付けることができた。研修の趣旨を明確に示し, 扱う教材の提示の仕方等を工夫するなど研修の展開を改善することによって, 教員一人ひとりが実験教材を用いた授業実践と理科教育への意識を高め, 指導力向上への意欲を喚起することができることを報告する。