理科教育学研究
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54 巻 , 3 号
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原著論文
  • 大山 光晴
    2014 年 54 巻 3 号 p. 307-317
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    教員は研修によって常に自己の指導力を向上させることが求められるが, 研修によって教員が技術や知識を獲得するだけでなく, 授業で活用できる実践力を向上させることが重要である。そこで, 本報告では工夫された研修の受講によって教員がどのような理科の指導力への意識を高めることができるのかを, 研修の前後に質問紙調査をおこなうことによって明らかにした。高等学校の理科教員を対象にした研修会では, 授業に即した実験教材を利用した模擬授業を実施し, 教員が探求の過程を体験できるような工夫をおこなった。また, 小・中学校の教員を対象にした研修会では, 金属の発熱と回路の関係について教員が探究的に実験をおこなって発泡スチロールカッターの製作をおこなった。これらの研修会での調査結果から, 授業に即した実験教材を工夫することや適切な発問をすることの大切さなど理科のさまざまな指導力を向上させることの意義等を参加教員に意識付けることができた。研修の趣旨を明確に示し, 扱う教材の提示の仕方等を工夫するなど研修の展開を改善することによって, 教員一人ひとりが実験教材を用いた授業実践と理科教育への意識を高め, 指導力向上への意欲を喚起することができることを報告する。
  • 風間 智子, 山野井 貴浩, 武村 政春
    2014 年 54 巻 3 号 p. 319-334
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    2012 年度から先行実施されている高等学校理科の新学習指導要領に基づく生物教育では, 新科目「生物」(4 単位)において, 「DNA の塩基配列などを比較することによって系統関係が調べられていることを取り上げることが考えられる」(文部科学省, 2009)とあるように, 分子進化を基盤とした系統樹(分子系統樹)の内容が前面に出てくる。そこで本研究は, 生徒にとって身近で関心も高いと思われる「野菜」を題材にして, 「野菜の可食部や花の形は系統を反映している」を仮説とし, rbcL 遺伝子産物のアミノ酸配列を用いて分子系統樹を描くことにより, この仮説を検証する生徒実習教材を開発することを目的とした。生徒自らが分子系統樹を描くことにより, 分子進化, 分子系統樹, 分子時計など, 新学習指導要領で要求される知識を効率よく学習できると期待できる。
    生物選択の高校生を対象に, フリーソフトMEGA 4.0 を用いて, NCBI から各種野菜のrbcL 遺伝子産物のアミノ酸配列をダウンロードし, 分子系統樹を描き, 同時に各野菜の分類体系を調べる授業実践を行った。その結果, すべての班で期待される分子系統樹を描くことができ, また実習前後質問紙調査の結果から, 上記仮説は棄却され, 「野菜の花の形は系統を反映しているが, 可食部の形は系統を反映していない」ことに生徒が気付くことができたこと, さらに分子進化, 分子時計, 分類等の基礎知識に関して一定の教育効果があることが示唆された。
    今後は, MEGA の英語表記やPC 操作の煩雑さを改善し, セントラルドグマ教材や進化教材との併用効果等についても検討を行いながら改良していくことで, 新学習指導要領の理念に根差した更なる効果的な生物教材, さらには植物の進化を学習するための有効な生物教材として発展することが期待される。
  • ―粒子概念を「状態変化」で導入し「溶解」で活用する授業―
    菊地 洋一, 高室 敬, 尾崎 尚子, 黄川田 泰幸, 村上 祐
    2014 年 54 巻 3 号 p. 335-346
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 小学校段階の粒子概念に関わる授業について, 物質の異なる現象を通して粒子概念の導入から活用にいたる一連の授業実践を行い, 粒子概念を用いた系統的な物質学習の可能性を示すことである。本研究では, 粒子概念を4年の「水と水蒸気」(対象児童 3クラス, 105名)で初めて導入した。その後, 5年の「もののとけ方」(対象児童 1 クラス, 35 名)で粒子概念を活用する授業実践を行った。本研究の授業では, 1 つの授業の内容は欲張らずに単純にし, 科学的に正しい粒子モデルで課題を解決して終わることを心がけた。これにより小学校段階における粒子概念の授業で, 獲得した知識をその後の授業場面で有効に活用できるかを検討した。本論文では, はじめに初めて粒子概念を導入する場面として「水と水蒸気」を選んだ理由を述べた。次に, 実践結果について報告した。教師側から供与した知識は, 「物質はすべて目に見えない小さな粒でできてる」と「粒の大きさは変わらない」だけである。子ども達はこれを手掛かりに, 「なぜ水は目に見えて, 水蒸気は見えないのか?」を, 科学的に正しい粒子モデルで解決した。翌年, ここで学習した内容を活用し溶解後の溶質の均一性について学習した。「もののとけ方」の授業後の確認テストの結果は, 溶解による質量保存の問題(正答率97%)および溶解後の溶質の均一性の問題(正答率100%)ともに正答率が高かった。また溶液の粒子モデルによる作図と説明文においても97%の子どもが, 溶質の均一性について粒子モデルによる溶解イメージを形成することができており, 学習内容の理解度は高いと評価できる。よって小学校段階においても, 異なる学習内容を通して粒子概念を適応し系統的に積み上げていく物質学習の可能性が示された。
  • 佐伯 英人, 沖野 公祐
    2014 年 54 巻 3 号 p. 347-356
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    中学校の第2 学年の単元「動物の仲間」において「無脊椎動物の仲間」が新しく導入され, 教科書には解剖実習が掲載された。本研究では, 2008 年度~2012 年度の中学校理科の授業における解剖実習の実態を調査した。その結果, 近年, 中学校の第2 学年の理科において解剖実習が実施されるようになってきたことが明らかになり, 主に解剖実習で用いられている材料はイカとアサリであることが分かった。
    また, 本研究では「無脊椎動物の仲間」において解剖実習を行い, 実践研究を行った結果, 解剖実習中に生徒が観察した部位・器官等に関する知見を得ることができた。その他, 生徒の意識の変容, 生徒の理解の程度について調べた結果, 明らかになったことは次の3 つである。
    ① スルメイカとアサリを材料とした解剖実習の前後において, 生徒の「解剖に対する意識」は, ポジティブな方向へも, また, ネガティブな方向へも変容しなかった。
    ② 単元終了時, 生徒の理解の程度を調査した結果, 脊椎動物の理解の程度において学級間に有意な差がみられなかった。一方, 無脊椎動物の理解の程度において学級間に有意な差がみられた。
    ③「無脊椎動物の仲間」の学習が , 「動物の仲間分けに興味がある」という意識を高めることに有効であるとはいいきれなかった。一方, 「生物を大切にしたい」という意識の高まりを維持することには有効であった。
  • ―科学的思考力・判断力および表現力に与える影響を中心に―
    相馬 惠子
    2014 年 54 巻 3 号 p. 357-367
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    情報通信技術の特長のひとつである双方向性は, 教師と児童・生徒が相互に情報伝達をするばかりでなく, 児童・生徒同士がお互いに意見を交換し, 教え合い学び合える協働学習の授業を可能にする。本研究は, 中学校理科の授業において班に1 台のiPad を配置し, FaceTime を利用して他校生徒と班ごとの意見交換を行わせることにより, 生徒の科学的思考力・判断力および表現力に与える影響を明らかにするとともに, その有効性を検討することを目的とした。意見交換前後のワークシートの記述と質問紙調査の分析および授業後の生徒の感想から, iPad のFaceTime によるビデオ通話を利用した他校生徒との協働学習は, 生徒の科学的思考力・判断力および表現力を育成する可能性があることを確認できた。
  • 高橋 一将, 磯﨑 哲夫
    2014 年 54 巻 3 号 p. 369-382
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, BSCS における進化の学習の特色を明らかにすることである。BSCS において進化及び進化の指導が重視される理由とBSCS の教師用参考書と教科書及び教材における進化の扱われ方に着目した。BSCS の教師用参考書と教科書及び教材における進化の扱われ方は, BSCS において進化及び進化の指導が重視される理由を鑑みて具体化されたと考えられる。BSCS の進化の学習の特色として, 進化が生物学における進化の中心的役割を反映した形で, 学習内容全体を通して扱われていたこと, 進化の学習を通して, 科学の本質の理解や, 実社会における進化が関わる社会的諸問題の科学的な背景の理解も図られていたこと, などが挙げられる。加えて, 創造論者との進化の指導をめぐる論争が続くアメリカにおいて, 学校で教師が進化を教えることを支援し, 進化を含んだ科学として誠実な生物学を生徒に示すことを意図して進化の学習が重視されている点も特色の1 つと考えられる。
  • ―リパーゼによる油脂の分解反応の測定―
    田中 謙介
    2014 年 54 巻 3 号 p. 383-392
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, リパーゼによりオリーブ油から分解生成するグリセリン量を自作の屈折計を用いて簡便に測定できる教材の開発に取り組んだ。屈折計は3 枚のスライドガラスをプリズム状に接着した構造であり, プリズムの中に溶液を入れ, 横からレーザー光を当てる。溶液を透過しスクリーン上に到達したレーザー光は, 溶液濃度に比例してその位置を移動する。リパーゼには位置特異性をもたない微生物由来のCandida rugosa リパーゼ(CRL)を用いた。反応開始から3 時間後のグリセリン量を屈折計により測定したところ, 中和滴定より求めた脂肪酸の約3 分の1 の値を示し, 酵素法から得られたグリセリン量との比較においてもその差は7%程度に収まった。
    本研究の応用実践として, リパーゼの位置特性を調べる実験を高等学校理科部での活動としておこなった。CRL とは異なり, トリグリセリドの2 位に作用しない豚膵臓リパーゼではグリセリンの顕著な増加は認められない結果が得られ, 生徒を対象とした装置の活用も可能であることが示された。
  • ―マイクロスケール実験による教材開発及び授業実践―
    中野 源大, 芝原 寛泰
    2014 年 54 巻 3 号 p. 393-401
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    二酸化窒素を用いた化学平衡の移動を示す実験教材は, 多くの高等学校化学の教科書に掲載されている。しかし, 有毒な二酸化窒素の気体や劇物である濃硝酸を用いること, またドラフト等が必要なこと等多くの課題がある。さらに, 化学平衡の移動に伴う二酸化窒素による褐色の変化は一瞬であり, 観察は容易ではない。本研究では, シリンジや活栓コックを用いたマイクロスケール実験による教材開発を行った。個別実験によって, 生徒が確認できるまで化学平衡の移動を繰り返し観察することが可能になった。さらに, 試薬の取り扱いにおいても安全性が向上した。
    本教材を用いて公立高等学校で授業実践を行い, 教材の有効性について検証した。授業後のアンケートの結果, 本教材は, マイクロスケール実験の特徴でもある個別実験を活かすことで, 生徒に実感を伴った理解を促すことができた。
  • ―「浮力」の概念に関する指導方略への提言―
    新里 和也, 古屋 光一
    2014 年 54 巻 3 号 p. 403-417
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 中学生から大学生までの「浮力」の理解を明らかにするために2 つの調査を実施した。調査Ⅰの目的は, 中学校段階における「水圧」の学習が, その後学習する「浮力」の理解にどのような影響を与えるのかを対象者の「水圧」の認識と「浮力」の認識の観点から検討することである。また, 調査Ⅱの目的は, 浮き沈みする水中の物体(水面に浮かんでいる状態および水そうの底に沈んでいる状態の物体を含む)に働く「浮力」の大きさに関する対象者の認識を明らかにすることである。調査Ⅰの結果, 以下の2 点が明らかとなった。
    (1)「水圧」の大きさを正しく認識している対象者は, 「浮力は深い方が大きい」もしくは, 「浮力の大きさは同じ」と回答する傾向にあるが, 「浮力は浅い方が大きい」と回答することはほとんどない。
    (2)「水圧」の大きさを誤って認識している対象者には, 「浮力」は「浅い方が大きい」, 「深い方が大きい」, および「浮力の大きさは同じ」とする3 つの回答が混在している。したがって, 「水圧」の学習は, 「浮力」の理解に一定の効果がある。調査Ⅱの結果, 以下の2 点が明らかとなった。
    (1)「浮力」を学習していない対象者には, 「水中で静止しているひもでつるした物体に浮力は働くが, 水中において浮き沈みする物体に浮力は働かない」とする誤った考えが多く見られた。
    (2)一方, 「浮力」を学習した対象者には, 上記のような誤った考えよりも, 「物体全体が水中に没している場合と, 物体の一部が水面から出ている場合の浮力の大きさは同じ」とする誤った考えが多く見られた。したがって, 水中で静止している物体に働く「浮力」だけではなく, 水中で運動している物体に働く「浮力」を検討することは, 「浮力」の理解を促進する。あわせて, これらの結果から, 授業改善の方向性を示した。
  • ―小学校理科 6 年小単元「生物と空気のかかわり」に注目して―
    平山 大輔, 森川 英美, 後藤 太一郎
    2014 年 54 巻 3 号 p. 419-426
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    小・中学校理科での現在の光合成実験授業には, 気体検知管を用いた反応前後の気体濃度の測定, ヨウ素デンプン反応による光合成産物の検出, BTB 溶液などの指示薬による光合成の確認などがあるが, これらの実験では光合成の過程を直接的に知ることができない。本研究では, 目に見えない科学情報をリアルタイムに計測する情報収集機器であるデータロガー(Pasco 社)の活用を考案し, 小学校理科の光合成の授業で実践してその有効性を検討することを目的とした。まず, 授業での活用に適した植物の選定のため, 身近な植物6 種(ソメイヨシノ, シラカシ, サツキツツジ, ヨモギ, ドクダミ, ジャガイモ)の葉5.0 g を用いて10 分間の測定試験を3 回ずつ行った結果, ドクダミで比較的安定した明瞭な反応がみられた。次に, 三重県津市内の小学校1 校の6 年生4クラスで, このデータロガーとドクダミを用いた授業実践を行った。授業は各クラスの担任教師による演示実験とし, データロガーのモニターを大型ディスプレイに投影する方法をとった。実践後, 児童45名から自由記述式の感想を得た。また, 授業を行った教師4名を対象に, 用いたICT機器類の感想の聞き取りを行った。児童の感想を分類したところ, 全体の84%の児童が光合成の理解を示す記述をし, 特に33%の児童は, データロガーによって可視化された気体濃度の変化過程に言及していた。さらに, 教師からは, 理解の促進という観点に加え, 1 回の授業時間内に光合成と呼吸の実験を完結できるという点からもこのICT 機器の有効性を認める感想が得られ, すべての教師がこの機器をまた授業で使用したいと回答した。以上を総合し, 本研究でのICT の活用は光合成および呼吸の授業に有効であると結論づけた。
資料論文
  • 塩野 貴之, 真栄城 亮, 楠本 聞太郎, 久保田 康裕
    2014 年 54 巻 3 号 p. 427-437
    発行日: 2014/03/18
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, “TimeTree: the timescale of life”(TimeTree)を用いて生物多様性の進化的な背景を理解するための授業を実践し, その学習効果を検討した。TimeTree は, 2 種の生物が共通祖先から分岐した年代を調べることができるオンラインツールである。これを用いて様々な生物種間の系統樹を作成し, 生物の進化の産物である生物多様性の概念を理解できる授業を開発した。TimeTree の教材としての有効性を検証するため, 教養課程の大学1, 2 年生47名を対象に, 動物園で実習を行った。実習では, 学生にスマートフォンを用いてTimeTree を操作させ, 10種の動物種間および霊長類7種間の分岐年代を調べさせ, それを基に系統樹を作成させた。なお, 実習の前後に進化に関するクイズを行い, その学習効果を検討した。動物園での実習とクイズの正答率の結果から, 系統的思考法(tree thinking), 進化の時間スケール, 生物地理, 大進化に関する項目について有意な学習効果がみられた。ただし小進化や収斂進化については実習だけでは身につかず, 改善の余地があった。新指導要領による生物教育では進化や生物多様性が重要視されているものの, それらの理論や概念を学ぶことのできる教材が不足している。TimeTree を用いて系統樹を描く授業は, 高校や大学の教養教育で進化や生物多様性の理解を促進すると考えられる。
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