2017 年 57 巻 4 号 p. 403-421
児童生徒にとって最善の学習環境をデザインできる理科を教える教員の養成・研修等の教師教育の現実的な在り方の検討材料を提供するため, 2015年(平成27年)に実施された全国学力・学習状況調査の理科の問題を利用し, 琉球大学で教員を目指す学生の解答状況から彼らの学力の一端と比較的正答率の低い問題の誤答傾向や誤答の背景を調査した。小学校理科の問題を解答した学生(122名)の平均正答数は19.9で, 平均正答率は82.7%であった。中学校理科の問題を解答した学生(79名)の平均正答数は20.6で, 平均正答率は82.5%であった。どの問題の誤答の背景にもケアレスミスがあったが, 小学校理科の結果から, 教員志望学生には観察・実験に関する「技能」と問題場面において知識・技能を活用する「適用」に苦手な部分があった。未履修・未経験への対応と科学的に考察できる能力の育成が必要であることが示唆された。中学校理科の結果では, それに加えて自らの考えや他者の考えを検討して改善する「検討・改善」にも苦手な部分があることが示唆された。さらに, 電磁誘導の問題の解答状況から「本質をわかっていない者」が多くいるだけでなく「わかっていないのにわかっていると判断された可能性のある者」の存在が推定される。こうした状況の改善には教科書教材を上手に用いて理科の学習内容に関する専門的知識の確かな定着と教えるための知識の両方を教員志望学生に具備させることが必要である。