理科教育学研究
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原著論文
教師用指導書を対象とした教師の学習支援に関する分析: 小学校第6学年「月と太陽」の事例
山口 悦司
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2017 年 57 巻 4 号 p. 369-385

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抄録

本研究の目的は, 教科書準拠の教師用指導書に焦点を当てて, 理科を教える教師の学習を支援しうる特徴を我が国の教師用指導書がいかに備えているかを解明する試みの第1歩として, 小学校第6学年「月と太陽」の単元を事例とした分析結果を報告することであった. 具体的には, 教育的カリキュラム資料という理論的概念に基づいた分析フレームワークを採用し, 小学校理科の教科書を出版している全6社が発行する教師用指導書を分析対象として, (1)どのような内容の専門的知識の学習が重点的に支援されているのか(支援の内容), (2)専門的知識の学習支援のために, どのような形態が活用されているのか(支援の形態), という2点を明らかにすることを試みた. その結果, 本研究で対象とした教師用指導書について, 以下の2点を明らかにすることができた. (1)支援の内容については, 科学の内容に関するPCK(Pedagogical Content Knowledge)の学習, および科学の方法に関するPCKの学習が重点的に支援されている. とりわけ, 科学の内容に関するPCKについては, 単元に固有な科学の事象に児童が取り組むことに関する知識の学習が, 科学の方法に関するPCKについては, 問題設定, データ収集・分析, 証拠に基づく説明のそれぞれに児童が取り組むことに関する知識の学習が手厚く支援されている. その一方で, 研究計画の立案やコミュニケーションに関する知識の学習は, あまり支援されていない. (2)支援の形態については, 実施の手引き, すなわち, 個々の教授方法・教材・学習活動を効果的に利用する仕方に関する学習を支援する形態が活用されている. これに対して, 理論的根拠, すなわち, 教授方法・教材・学習活動について, それらが教育的・科学的に適切である理由に関する教師の学習を支援する形態はあまり活用されていない. 以上の結果に基づいて, 秀逸点と問題点という2つの側面から, 我が国の教師用指導書の特徴を考察した.

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© 2017 日本理科教育学会
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