理科教育学研究
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原著論文
小学校理科における野外での生物観察を指導する自信と動植物の認知度に関する因果モデル
―教員養成系大学生に対する調査―
佐藤 綾栗原 淳一
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2017 年 58 巻 1 号 p. 13-26

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抄録

小学校理科においては身近な自然体験の充実が求められており, 第3学年と第4学年で生物と環境との関わり合いを野外での観察を通じて学習する。一方, 多くの教員が野外での生物観察の指導に不安を感じており, 教員養成における大学での知識の獲得が求められている。そこで, 教員養成系の大学生を対象に, 将来教員になった際に小学校の理科で野外での生物観察を指導する自信の程度とその理由について調査するとともに, 以下に示す6つの要因が「野外での生物観察を指導する自信」に与える影響について因果モデルを作成した。その結果, 9割以上の学生が野外での生物観察の指導に不安を感じており, その理由として, 名称などの生物の知識の不足が最も多いことが示された。また, 「動植物名の認知度」, 「小・中学時の生物に関する学び」, 「小・中学時の自然体験」, 「生物の知識に関わる現在の活動」, 「身の回りの生物への興味・関心」, 「大学での生物の学び」の6つの要因について, (1)「動植物名の認知度」は「野外での生物観察を指導する自信」に直接影響を与える, (2)「小・中学時の自然体験」, 「小・中学時の生物に関する学び」, 「生物の知識に関わる現在の活動」, 「身の回りの生物への興味・関心」が「動植物名の認知度」に直接影響を与える, (3)「野外での生物観察を指導する自信」へ直接影響を与える要因のうち, 特に「生物の知識に関わる現在の活動」の影響が大きい, ことが明らかとなった。これらのことから, 野外にいる動植物の名称に関する知識は学生が将来教員になった際に野外での生物観察を指導する自信に影響を及ぼすものの, 博物館や動植物園を訪れたり, 生物に関するニュースや書籍を読むなど, 生物についての知識獲得に関わる活動を学生が行うための支援をすることで, 将来教員になった際の野外での生物観察を指導する自信を高めることができる可能性が示唆された。

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© 2017 日本理科教育学会
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