理科教育学研究
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資料論文
生物進化の実感を伴った理解を目指して
―脊椎動物の前肢の骨格標本を利用した授業の実践―
山野井 貴浩
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2017 年 58 巻 1 号 p. 89-97

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抄録

中学校理科や高等学校生物基礎では, 脊椎動物の前肢の骨格に注目し, 両生類, 鳥類, 爬虫類, 哺乳類は異なるグループに分類されるものの, 基本的な骨格は共通していることから, 共通の祖先から進化してきたことを扱う。現行の中学校理科や高等学校生物基礎の教科書を見ると, 脊椎動物の前肢の基本的な骨格が共通していることを説明する図や写真は掲載されているものの, 観察・実験の例は掲載されていない。生徒はこの図や写真を見ることで, 脊椎動物は祖先を共有していることを実感できるのだろうか。そこで, 本研究では脊椎動物の骨格標本を用いた授業を実践し, 生徒の進化に関する実感や理解が授業により変化するかを質問紙調査により検討した。授業前後に行った質問紙調査の結果, 生徒はこの授業を通して「祖先の共有と進化」, 「生物の共通性と多様性」, 「退化」の実感や理解が深まることが示唆された。また, 脊椎動物の進化に対する興味も増すことが示唆された。現職の中学校理科の教員対象の研修会においても, この授業を紹介し, 「中学生に進化を教えるうえで有効な教材と思うかどうか」を尋ねたところ, ほとんどの教員が「そう思う」と肯定的な回答をした。

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© 2017 日本理科教育学会
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