理科教育学研究
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原著論文
数的処理が要求されない作図スキルの個人差と物理分野の期待信念との関連
原田 勇希坂本 一真鈴木 誠
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2017 年 58 巻 1 号 p. 65-80

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抄録

物理分野の学習では, 現象を心的にイメージし, それを適切に図示することが問題解答に促進的に働く。近年, 空間を視覚化する心的イメージ能力の個人差が, あらゆる科学・技術分野における学習達成の重要な因子であることがわかってきており, 物理分野でも同様の報告がある。本研究では, 高校1年生(n=173)を対象とし, 物理分野における作図スキルと学習意欲の側面である期待信念との関係の分析を行った。調査の実施にあたって, 演算などの数的処理を要求しない作図スキルテストを作成した。その結果, 与えられた文章から現象をイメージし, 状況を描く「可視化」が苦手な子どもは, 手段保有感(努力)低下のリスクがあることが示された。また, 図の中に物理学的概念を書き加える「物理学的描写」スキルが高いレベルで身についてはじめて, 高い統制感, 手段保有感(能力), 手段保有感(教師)が獲得されることが示唆された。また, 性差において, 客観的に測定されるテストと比べ, 特に統制感と手段保有感(能力)で大きな差があった。この結果から, 女子の方が物理分野の学習達成に対して, 自らの能力を低く査定しやすい傾向があることが示された。

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© 2017 日本理科教育学会
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