本研究は, 物理分野における作図スキルと心的イメージ能力との関連を検討することと, 心的イメージ処理に苦手さのある生徒が高い作図スキルを習得する上で有効な学習方略を検討することを目的とした。本研究は高校1年生(n=80)を対象に行われた。分析の結果, 文章情報から物理現象を作図する「可視化」と, 図中にベクトル情報などの物理学的概念や数値情報を記入する「物理学的描写」の両作図スキルとも, 心的イメージの空間的操作能力による有意な影響が確認された。また, 空間的操作能力が低い群において言語的符号化を使用するほど可視化得点が高い傾向があり, 体制化方略を使用する生徒ほど物理学的描写得点が高い傾向があった。以上の結果より, 心的イメージ能力は物理分野の作図スキルの個人差を説明する変数であるが, 心的イメージの空間的操作が苦手な生徒であっても, 適切な学習方略の活用によって作図スキルは醸成可能であることが示唆された。