理科教育学研究
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59 巻, 1 号
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原著論文
  • ―小学校第5学年「電流の働き」の実践より―
    太田 雄久, 粟生 義紀, 秋吉 博之
    2018 年 59 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    研究の目的は, 児童の感性を育てる小学校理科の授業を構想・実践し, その効果を検証することである。研究の方法として, これまでの児童の実態を把握し, 授業実践を行った。質問紙調査から, 児童の自然体験と遊びの経験が明らかとなった。特に, 本研究の授業実践の対象である「電流の働き」の内容に関わる「乾電池を使ったおもちゃで遊んだことがある」「じ石を使ったおもちゃで遊んだことがある」の項目では, 50%以上の児童が「わりと経験がある」「かなり経験がある」と回答した。その一方で, 「全く経験が無い」「あまり経験がない」と回答した児童は, それぞれ3.2%, 9.7%であった。この児童の実態を踏まえて, 児童の感性を育てる理科授業を構想した。その特徴として, 次の2点が挙げられる。1つ目は, これまでの遊びの経験の差を埋めるために, 導入部分で全員が電磁石で鉄を引きつけるという場を設定することである。2つ目は, その後の問題解決の過程において, 指導者が児童の感性を意味付けたり価値付けたりすることを繰り返し行うことである。実践した授業のプロトコルの分析から, 指導者が児童の感性を意味付けたり価値付けたりする支援を繰り返し行うことで, 児童は問題解決への見通しを持つことができたり, 「実感を伴った理解」へ至ったりすることが明らかとなった。本授業実践を通して, 指導者の児童の感性に対する意味付けや価値付けを繰り返し行うことで, 児童の感性を育てることができるという知見が得られた。

  • 奥村 仁一
    2018 年 59 巻 1 号 p. 11-25
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    国際調査によると, 日本では他国に比して科学の学習を楽しいと思っている生徒や科学に対する興味・関心の高い生徒の割合が低い。その結果を踏まえて現行の高等学校学習指導要領では, 実験・観察を積極的に行うことや, 科学技術の急速な発展を踏まえた学習内容を盛込んだことが示されている。

    筆者らは大学と連携して先端研究の内容を体験的に学ぶDNA実験講座を実施したが, 参加できる生徒の人数に限りがあったため, 元々生物学やDNAに興味・関心のある生徒が応募により参加している状況が見られた。そこで, 文系・理系を選択する前の時期の高校1年生を対象としてセントラルドグマ再現実験を実施し, 両実験後に行ったアンケートを比較・分析し, 考察した。

    その結果, 両実験とも生徒は科学に対して楽しいと感じ, 興味・関心を高める効果があったと考えられた。そして実施方法の違いから, DNA実験講座では進路学習やキャリア教育につながる効果があるものと推察され, またセントラルドグマ再現実験では文系・理系を選択する前の高校1年生に対して高校の実験室で手軽に多人数で実施できる点に於いて教育的効果が高いと考えられた。

    したがってこれらの異なる形態の実験授業を適切な時期に適切な対象生徒に対して実施することが重要であることが示唆された。

  • 加藤 智威
    2018 年 59 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究は, 日本の中学校理科授業における教師と生徒の, 談話構造および教師の発問の特徴を明らかにすることを目的としている。本稿は, ケーススタディとして広島県内の中学校理科授業における教室談話について, 教師による「発問/Initiation(I)」-生徒による「応答/Response(R)」-教師による「評価/Evaluation(E)」という3要素から成り立つIRE構造と, 教師による「発問/Initiation(I)」-生徒による「応答/Response(R)」-教師による「後続発話/FeedbackもしくはFollow up(F)」という3つの要素からなるIRF構造を援用して分析した。その結果, IRF構造が成立する回数はIRE構造が成立する回数より多く, 教師は生徒の応答が正誤いずれの場合であっても, すぐにその評価は下さず, 生徒の応答を起点に教室全体の思考を深めさせようとする姿勢が見られた。また, 教師の発問および生徒の応答に対する教師の後続発話で発せられた発問について改訂版ブルームの分類指標を援用して分析した。その結果, 先行研究の開発途上国3ヵ国では発せられることが希であった“分析する”“評価する”および“創造する”にあたる高位の発問がなされ, それらの発問はIRE構造およびIRF構造における「I」パートよりもIRF構造における「F」パートにおいてなされることが多かった。最高位の“創造する”にあたる発問がなされたのは, 実験の導入時であり, 知識としては知っている現象について, それを検証するための実験方法を考案させるというものであった。

  • 岸田 拓郎, 小倉 康
    2018 年 59 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究は, 理科における小学生の実験計画力を育成するための授業モデルを考案し, 授業実践を通してその効果を検証することを目的とした。専用ワークシート「実験計画シート」と指導用の補助プリントを用い, ①仮説とは何かの指導, ②言葉つなぎによる検証方法発想の指導と仮説の設定, ③科学的な検証方法にするための合言葉の指導と詳細な実験計画の立案, ④合言葉に基づいた児童同士による相互確認, ⑤教師による実験計画の確認, ⑥実験の実施, ⑦実験の反省, ⑧結果の共有と結論の導出, という過程によって児童の実験計画力の育成を図る授業モデルを考案した。効果を検証するため小学校6年生2学級の児童を対象に「水溶液の性質」の単元で授業実践を行った。その結果, 考案した授業モデルを用いた実験群は, 用いていない統制群よりも, 仮説を設定する能力と実験を詳細に計画する力の得点が有意に高まった。

  • 小暮 建宏, 小倉 康
    2018 年 59 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    児童が自然の事物現象に触れ, 自ら問題を発見することが問題解決の過程で思考力を育むために重要とされている。そこで, 本研究では, 導入段階で自由な試行活動を行うことにより問題発見・設定する力の育成ができるか検証した。その際, 児童の創造的思考(拡散的思考・集中的思考)を促すため, 付箋紙に気づきを書き出し, 児童自ら類型化していくKJ法を取り入れた。小学校第5学年3クラス(実験群2クラス, 統制群1クラス)を対象に, 単元「電流が生み出す力」における検証授業を実施した結果, これらの指導法が問題発見・設定する力の育成に有効である可能性が示唆された。

  • 榊原 保志, 山下 さくら, 喜多 雅一
    2018 年 59 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    2015年4月に大地震に遭遇したネパールにおいて防災教育を推進するために, 現地の教育状況に応じた教材として造山運動モデルを開発し, それを用いた実習の教育効果の検証を行った。現地の中学生, 高校生, 大学生を対象とした授業をそれぞれ1回実施し, 授業感想欄を設けたワークシートと, 高校生のみ数週間後に実施した事後アンケートを用いて授業評価を行った。ネパールではヒマラヤ山脈のでき方やインド大陸の移動については知らない生徒が多かった。エベレストでたくさん出てくるアンモナイトの化石は街中でよく売られているが, ほとんどの生徒は近くで見たことがなかった。生徒は実験や写真を用いる授業に対して好意的であり, 授業で使った造山運動モデルはヒマラヤ山脈の形成過程を理解するのに役立ち, ヒマラヤ山脈やエベレストに興味を高める効果があった。

  • ―グラフの構成要素に着目した内容分析から―
    末廣 渉, 内ノ倉 真吾
    2018 年 59 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究では, 小・中学校理科教科書に見られるグラフを, 変数及びグラフの種類に着目した量的傾向の調査と, グラフの構成・解釈の指導に関する内容構成の調査を行った。その結果, 四点明らかとなった。一点目として, 中学校の方が小学校に対し, 総計, 1頁当たりともに教科書に見られるグラフ数は多かった。二点目として, 小学校から中学校へと校種が移行すると, 教科書に見られるグラフの種類および変数の種類の割合が変化していた。三点目として, 小学校の教科書に見られる直線・曲線グラフは点, 軸の名称, 変数の単位など一般的なグラフの構成要素を多く含んでいたのに対し, 中学校では, 具体的な数値を特定せずに変化の傾向のみを捉える, より抽象度の高いグラフの割合が高くなっていた。四点目として, 日本の個別教科書の事例検討を通じて, 当該教科書におけるグラフの構成・解釈の指導は, グラフで表す目的, グラフの構成の手続き, 測定の不確実性など, グラフの構成に焦点を当てていた。一方, 変数の性質や目的を踏まえたグラフの種類の選択, グラフの解釈, 独立変数・従属変数の説明, 近似線の数式化については, 言及されていなかった。これらの分析から, 教科書の内容構成の追加・拡充の視点として, 変数の性質とグラフの種類の選択の学習, グラフの構成・解釈に関する手続き的知識と認識論的な知識の関連付けを指摘した。

  • 遠西 昭寿, 福田 恒康, 佐野 嘉昭
    2018 年 59 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    「主体的な学習」においては, 行為や具体的操作よりも心的・認知的な意味での主体性が問われなければならない。本研究の目的は, 観察・実験における主体的探究者としての科学者と授業における学習者の認知的活動を比較して, その差異から授業を改善することである。その結果, 観察や実験の結果の考察においては, 観察・実験が確証をめざす当該の理論のみならず, その理論を含む理論体系の全体が学習に先行して概観されていなければならないことを示した。さらにアプリオリな理論体系の存在は, 問題の発見から仮説設定, 観察・実験の方法の決定といった一連の過程においても必然であることを示した。すなわち, 観察や実験で演繹されるべき理論(仮説)のみならず, 学習の成果として期待される理論の体系的全体の概観が, 当の学習の前提であるという循環論である。本論文ではこの問題を解決する具体策として, 教科書記述の改善と現在の教科書を使用した対応の方法を提案した。

  • 長沼 武志, 森本 信也
    2018 年 59 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究は, 子どもの自律的な学習による, セルフ・コンセプトの構築過程を明らかにすることを目的とした。教師は, 足場づくりとして, フィードバック機能であるタスクレベルやプロセスレベル, 自己調整レベル, 自己レベルに対するフィードバックを実施し, 子どもの科学概念構築を促すとともに, 子どもの表現を価値づけ, フィードバック機能の内面化を促した。一方, 子どもが四つのレベルを自覚的に駆動させて問題解決に取り組む実態を把握すると, 足場はずしを実施して自覚的な駆動を促した。子どもは, 足場づくりから足場はずしの一連の過程を通してフィードバック機能を内面化しながら学習に対する動機づけを高め, タスクレベルからプロセスレベル, 自己調整レベルのフィードバック機能を自覚的に駆動させた。結果として自律的な問題解決に取り組み, 科学概念の理解に関わるセルフ・コンセプトを構築した。つまり, フィードバック機能の自覚的な駆動は, 自律的な学習を具現化するとともに, 科学概念に関するセルフ・コンセプトの構築に寄与することが明らかとなった。

  • 仲野 純章
    2018 年 59 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    産業界では, 現状の作業を時間的側面から定量的に解析し, 改善に繋げる問題解決型手法の一つとして, IE(Industrial Engineering)という概念が, 特に製造業を中心に普及している。教育界では, 「受動的学習」から「能動的学習」へと学習スタイルの変革が進展している一方で, 時間的側面に着目し, 能動的学習の教育効果を増大させるために授業構成や授業体制の改善をどう図るかという議論を科学的に進めている事例は乏しい。今回, 能動的学習を意識した実態検証用授業として, 「熱量保存則」の実験に取り組むグループワークを実施し, IE的思考に基づき学習者の動作分析を行った。その結果, 授業時間に占める付加価値時間の割合が6割に届かず, 付加価値を生まない付帯時間などの削減余地の大きさが明らかとなった。また, 個人の付加価値時間が短いほど, あるいは, 個人の付加価値時間が所属グループの平均付加価値時間に比べて短いほど, 学習内容の理解度合いが低下することが示された。更に, 作業の推進に優れるグループこそ付加価値のない手待ち時間を形成してしまう皮肉な状況も露呈した。本研究により, 付加価値時間の増大と集団内(グループ内, 及びグループ間)での付加価値時間のムラ低減といった改善点が明らかとなり, 教科教育現場にIE的思考を導入する必要性が示唆された。

  • ―波動問題への対処状況分析を通じて―
    仲野 純章
    2018 年 59 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    物理問題を解く際の有効なアプローチとして, 作図, すなわち問題の設定条件などを可読性に富んだ図として表現すること(物理的描写)が要求される。物理的描写は, 対象となる物理現象に対する本質的理解を伴った上でなされるべきであることはいうまでもない。しかし, 物理教育で扱う物理現象の中には, 観察が難しい現象(難観察現象)も種々存在し, それらについては, 学習者の本質的理解を助ける演示や実験に大きな制約がかかる。そして, その結果として, 物理問題への対処過程での物理的描写とそれに基づく思考に支障をきたす可能性が懸念される。本研究では, 難観察現象ではない弦の振動と難観察現象である気柱の振動を一般的な方法で指導した後, 両物理現象に関する類似問題に取り組ませ, それぞれの対処過程を比較した。その結果, 弦の振動に関する問題に比べて, 気柱の振動に関する問題の方が物理的描写を行う者が少なかった。また, 物理的描写と計算処理で対処した場合でも, 気柱の振動に関する問題では物理的描写の不備が非常に多く見られた。以上の結果から, 物理教育の中でなされる物理現象の可視化が不十分であれば, 当該現象に関する物理問題に対処する際, 物理的描写の段階でつまずきが発生するリスクが増えることが示唆された。

  • ―理科学習の意義を「科学的能力」から認識させる有効性と「日常生活との関連」から認識させる危険性―
    西内 舞, 川崎 弘作, 後藤 顕一
    2018 年 59 巻 1 号 p. 113-123
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究では, 自己決定理論から動機づけを捉え「理科学習の意義の認識」が「相互評価表を活用する学習活動(以下, 相互評価活動と略す)への動機づけ」にどのような影響を与えているかについて明らかにすることを目的とした。本目的を達成するために, まず, 学習者が認識している「理科学習の意義の認識」と「相互評価活動への動機づけ」を測定するための質問紙を検討, 作成した。次に, 高校生を対象にこれらの質問紙による調査を実施し, 調査結果を基に「理科学習の意義の認識」が「相互評価活動への動機づけ」にどのような影響を与えているかについて共分散構造分析により明らかにした。その結果, 理科学習を通して, 学習者自身が, 「理科学習の意義の認識」を「科学的能力」が身に付くと捉えると, 「相互評価活動への動機づけ」のうち, 自律性の高い「同一化・成長」の動機づけに正の影響を与え, 自律性の低い「外的調整」には負の影響を与えていることが明かになった。また, 「理科学習の意義の認識」を「科学と身近な自然や日常生活の理解」と捉えると, 「相互評価活動への動機づけ」のうち, 自律性の高い「内発的調整」, 「同一化・成長」, 「同一化・将来」の動機づけに加え, 自律性の低い動機づけである「取り入れ・他者」にも正の影響を与えていることが明らかになった。つまり, 「理科学習の意義の認識」を「科学と身近な自然や日常生活の理解」と捉えると, 自律性の低い動機づけまで高めてしまう危険性が示唆されたと考えられる。

  • 原田 勇希, 坂本 一真, 鈴木 誠
    2018 年 59 巻 1 号 p. 125-137
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究は, 物理分野における作図スキルと心的イメージ能力との関連を検討することと, 心的イメージ処理に苦手さのある生徒が高い作図スキルを習得する上で有効な学習方略を検討することを目的とした。本研究は高校1年生(n=80)を対象に行われた。分析の結果, 文章情報から物理現象を作図する「可視化」と, 図中にベクトル情報などの物理学的概念や数値情報を記入する「物理学的描写」の両作図スキルとも, 心的イメージの空間的操作能力による有意な影響が確認された。また, 空間的操作能力が低い群において言語的符号化を使用するほど可視化得点が高い傾向があり, 体制化方略を使用する生徒ほど物理学的描写得点が高い傾向があった。以上の結果より, 心的イメージ能力は物理分野の作図スキルの個人差を説明する変数であるが, 心的イメージの空間的操作が苦手な生徒であっても, 適切な学習方略の活用によって作図スキルは醸成可能であることが示唆された。

資料論文
  • 仲野 純章
    2018 年 59 巻 1 号 p. 139-146
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究では, 高等学校における万有引力分野の指導の中で, 生徒が感じている当該分野に対する否定的な印象(ネガティブ感情)を収集・分析し, その結果を踏まえた授業を設計・実践して効果を調べた。授業実践前の意識調査では, 対象集団の約1/4が当該分野に興味を持てていない実態が明らかとなった。また, 当該分野への興味有無に関わらず, 「状態や運動をイメージしにくい」というネガティブ感情が多く持たれていることも分かった。更に, 当該分野に興味を持てていない集団内では, 「身近さを感じにくい」というネガティブ感情も目立った。そこで, 様々なネガティブ感情, 特に, 当該分野に興味を持てていない集団で目立つネガティブ感情を意識し, なおかつ生徒に大きな裁量を与える形で, 皆既月食をテーマとした授業を設計・実践した。授業では, 身近な道具を用いた簡単な実験で重力加速度を求めさせ, その値と皆既月食動画から得られる情報のみを頼りに理論計算を進め, 壮大なスケールの地球-月間の概算距離を導出するというグループワークを実施した。その結果, 深い学びに繋がる主体的・対話的なグループワークが展開され, 9割以上の生徒が今回のような活動があればネガティブ感情が改善されていくと感じると答えた。以上のように, ネガティブ感情が改善に向かう見通しが示され, 学習者の意識分析を反映した授業設計プロセスの有効性が示唆された。

  • ―第6学年「金星の満ち欠け」の学習を事例として―
    西村 一洋
    2018 年 59 巻 1 号 p. 147-159
    発行日: 2018/07/31
    公開日: 2018/08/22
    ジャーナル フリー

    天体を三次元的に考え,視点移動できる子どもの能力と,評価規準をどの段階に設定するかを吟味してみた。本研究の目的を「第6学年で,協同学習と模型による疑似体験を授業に取り入れることにより,『金星の満ち欠け』がどこまで理解できるか吟味し,評価規準を設定する。」とした。そして授業の評価規準を以下の(1)・(2)・(3)ように設定した。評価規準(1) 宇宙から見た図(太陽を中心とし,金星の軌道が示され,軌道上に位置する8つの金星を描き,太陽光線の方向が正しく示されている。)評価規準(2) 地球から望遠鏡で見た図(金星の形と大きさを正しく描き,評価規準(1)の8か所の金星と対応しているところを理解している。)評価規準(3) 自分の立っている位置(実際に観測している位置)から金星を見た図(東・南・西の方位と地平線を入れ,太陽からどのくらい離れているのかを描き,評価規準(1)の8か所の金星と対応しているところを理解している。)と設定した。その結果,第6学年では,「金星の満ち欠け」の授業を行うなら,評価規準(1)に設定するのが良いと判断をした。

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