2021 年 61 巻 3 号 p. 443-456
学習指導要領が目指す主体的・対話的で深い学びの実現に向けて,中学校理科においては探究の過程を踏まえた生徒の目的的な学習活動が肝要であることが先行研究から指摘されている。この経緯から,問題解決的な学習の枠組みにおいてルーブリックを用いたパフォーマンス評価が有用であることが既にわかっている。この学びの十全な実施には,教員と生徒の間で共有化されたルーブリックの構築が必要である。本研究では,中学校理科において,回収箱モデルを用いて教員と生徒がルーブリックの作成に取り組むことで,目的的な学習活動の実現可能性に焦点を当て,検証を行った。具体的には,鈴木(2014)の問題解決的な学習の枠組みにおいてルーブリック作成を取り入れた問題解決的学習の実践とその分析を行うことにより,教員と生徒によるルーブリック作成に関する視点の構築と目的的な学習活動の具現化に関する考察を行った。実践では,回収箱モデルを用いて教員と生徒でルーブリック作成に双方向的に取り組み,これをパフォーマンス評価のために運用することで,生徒の主体的・対話的で深い学びが具現化された。回収箱モデルを用いたルーブリックの作成は,主体的・対話的で深い学びの実現に寄与する評価のひとつのモデルケースとなり得ると考えられる。