2021 年 62 巻 1 号 p. 247-259
溶液の均一性は,溶液の理解の根幹をなす事項である。しかし,それは小学校の第5学年および中学校の第1学年で繰り返し学習してもなかなか理解が定着しないことが知られている。この問題を改善することを目的に,本研究は溶液の均一性の確かな理解を図る授業方略として,中学校の溶液の学習にコロイド溶液を一つの柱として位置づけ,液体を(A)透明な水溶液,(B)全体が濁っているコロイド溶液,(C)粒子が沈降する懸濁液の3区分の比較で考えていく授業の提案を行った。本授業では,生徒がこれらの液体の違いは液中の粒子の大きさの違いであることを実験的に明らかにする。さらに(B)コロイド溶液(絵具液)が全体的に濁っている理由をブラウン運動の観察から明らかにする。これらを組み合わせ(A)水溶液の均一性について考察する。中学1年における本授業の実践の結果,生徒は授業に高い関心を示すとともに溶液の均一性について理解度を評価するテストの得点も高成績であった。さらに対象者の中学2年次でのテストでも高成績を維持しており溶液の均一性についての理解の定着がみられた。したがって,本授業は溶液の均一性の理解を得る上で効果的であると考えられる。