理科教育学研究
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原著論文
概念転換方略による振り子の運動の指導に関する事例研究
―教室における認知的葛藤と社会的相互過程―
比樂 憲一遠西 昭寿
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2021 年 62 巻 1 号 p. 323-330

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抄録

本研究は,小学校第5学年「振り子の運動」における「周期と振れ幅」の学習に概念転換方略(ストライク・ポズナー,1994)を導入し,児童が競合する複数の概念に対するコミットメントを変化させて理論を切り替え,科学理論へコミットしていく過程を運勢ライン法(遠西,2012)によって調査した実践的研究である。授業では,「周期と振れ幅」に関する対立理論の積極的な競合を可能にするため,振り子の運動をおもりの「速さ」と「移動距離」で説明する指導(川崎・中山・松浦,2012)を,先行的了解(野家,2007)に位置付けて単元冒頭に指導した。本実践では,概念転換が児童相互,児童と教師による社会的相互過程によって生じる(福田・遠西,2016)ことが確認された。この過程では理論が実験結果を予測する正確さや理論の合理性の理解に基づく理論間の葛藤といった認知的側面だけでなく,理論支持者の人数やそこに属する児童の特徴,教師が授業終末に行う科学理論への公知としての支持といった社会的側面が,概念の生態学的ニッチの変動に機能していることが明らかになった。

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© 2021 日本理科教育学会
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