理科教育学研究
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資料論文
小型広角カメラを内蔵した透視天球儀が教材として持つ具体性の評価
―中学校理科「地球と宇宙」単元での授業実践事例―
吉田 はるか吉田 安規良
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2021 年 62 巻 1 号 p. 197-209

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抄録

生徒の空間把握能力の中でも視点移動能力の育成がカギとなる天文分野の学習に際し,小型広角カメラ(ウェアラブルカメラ)を内蔵することで内側から見た状況を確認できるように改造した透視天球儀を用意した。中学校理科「地球と宇宙」単元での授業実践を通して,生徒自身が五官や運動器官や思考力を用いて分析したり,操作したり,総合したりすることを確実に容易になしうる性質である「具体性」について,この改造した透視天球儀を評価した。4回の授業で改造した透視天球儀を用い,そのうち3回は実際に生徒に操作させた。授業後に,70人中57人から改造した透視天球儀を利用したことが天体の運動の理解に役だった旨の回答を得た。12人が「天球儀に慣れるまでが難しい」旨の指摘をしたが,実質3回の操作経験で,ほとんどの生徒が天球儀を操作できるようになり,地球の自転や公転と天体の動きの関係を考えることができた。このことから,改造した透視天球儀は,生徒の具体的視点移動から心的視点移動への移行を支援し,心的視点移動能力の習得の一助となる「具体性」のある教具だと判断できる。

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