2021 年 62 巻 2 号 p. 389-401
本研究は,質量の科学的概念の構築を試みた授業において,沖野・松本(2011)の3段階のメタ認知的支援(方略1「素朴概念の明確化」,方略2「素朴概念の獲得過程の明確化」,方略3「素朴概念と科学概念の接続・照合」)のすべてを講じるクラス(実験群:2クラス,N=52)と方略1だけを講じるクラス(対照群:2クラス,N=43)を比較し,方略2と方略3の有無によって,どのように生徒の理解に影響を及ぼすのかについて検討することを目的とした。その結果,質量の科学的概念の構築に対して,対照群よりも実験群の方が,有効性が高まることが示された。本研究により,方略2と方略3を講じることによって,方略1で生じた素朴概念と科学的概念の間の認定的葛藤が解消され,力および質量が運動に与える影響に関して,正しく考察できるようになったことが示唆された。