2022 年 63 巻 1 号 p. 3-13
国内で国際バカロレア(IB)の日本語デュアルランゲージ・ディプロマプログラム(DLDP)に取り組む高校におけるIBDP理科科目の実践を事例として,実践開始以来直面した諸課題を踏まえつつ,日本語DLDPにおける理科の特質と,日本の高校理科の実践へ効果的に作用しうる部分を探った。日本語DLDPにおける理科の特質として次の4点が挙げられる。第1に,グループワークが多用されること,第2に,理科の内容のみならず理科を取り巻く多様な観点を取り込んだカリキュラム構成であること,第3に,独立した学習者としての学習成果を求める工夫がなされていること,第4に,理科各科目で学ぶ内容についての深い理解や思考力が最終試験において問われることである。これらの特質を日本の高校理科へ反映させることで,協働的な学び,教科横断的な学び,探究に重点を置く学びを指向しつつ,理科各科目の深い内容理解およびハイレベルな思考力の育成が見込まれることが明らかになった。