本研究は,人間生活と自然環境との関わりについて学習することのうち,資源に関する学習に焦点をあて,どのような目的や内容で扱うことが必要であるか歴史的視座からの検討を試みた。資源の言葉の登場や資源の概念が成立した時期である1886年から1941年の旧制中学校の博物(鉱物)教科書を対象に,記載されている資源の種類や量と教科書執筆者達の意図を分析した。その際,磯﨑(2017)の所論を援用し,当時の社会的状況の変化と合わせ資源に関する学習の意義を考察した。その結果,資源開発に関する法令等の変化や言葉の意味の変化,エネルギー源の変化などの社会的状況の変化を受け,記載されていた資源の種類と数は時期によって変化していたにも関わらず,資源が有する文化的・教養的価値が一貫して重視され続けていたことが確認された。一方,資源が有する実用的・功利的価値や経済的・国家的価値などは,社会的状況の変化に合わせ,重視されていた時期が異なっており,その学習内容を集約すると,資源の地域固有性や希少性,成因,社会や技術との関わりを学習することが導出された。また,資源に関する学習が確立された経緯とその変遷から,資源に関する学習は,学習者の人生に関わる基盤となり人格形成に寄与する点で重要であったことが確認された。人間生活と自然環境が深く関わっていることを考えるうえで,特に資源が有する文化的・教養的価値が重要であることを指摘した。