理科教育学研究
Online ISSN : 2187-509X
Print ISSN : 1345-2614
ISSN-L : 1345-2614
原著論文
化学反応式を学習する難しさと「物質モデルカード」を操作させる授業の効果
植原 俊晴
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 64 巻 1 号 p. 51-62

詳細
抄録

本研究の目的は,①中学生が化学変化を化学反応式で表す際の難しさに関する実態を明らかにすること,②「物質モデルカード」を導入した授業を行い,上述の難しさを克服することに対する効果を検証することであった。①については,中学3年生を対象にして化学式や化学反応式に関する調査を行ったところ,化学式の意味を高度な知識理解の水準で理解することや,化学式から原子の種類や数に関する情報を正しく把握することが,化学変化を化学反応式で表すときの難しさであることが示唆された。②については,中学2年生を対象に「物質モデルカード」を操作させる授業(実験群)と「原子や分子のモデル」を描画させる授業(対照群)を行い,化学式や化学反応式に関する調査を行ったところ,学習直後の調査(事後調査)では,実験群と対照群で化学変化を化学反応式で表すことに対する効果に差は認められなかった。しかし,その後の調査(遅延調査)では,実験群で有意に多くの生徒が化学変化を化学反応式で表すことができていた。事後調査で化学反応式を表すことができていた生徒について,遅延調査で化学反応式を表すことができた生徒とできなくなった生徒の調査結果を比較したところ,「物質モデルカード」を操作させる授業には,化学変化を化学反応式で表すために必要な知識を保持させる効果があると推察された。

著者関連情報
© 2023 日本理科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top