小学校理科では,問題解決の過程において,実験の計画を検討して改善することと,考察を検討して改善することに課題が見られる。これらの指摘された課題を克服するためには,アメリカのテネシー州のSTEM教育で採用されている「エンジニアリング・デザイン・プロセス(EDP)」を,各学年において段階的に適用することがその解決策の1つとして考えられる。そこで,本研究ではテネシー州のK学年から第5学年までのSTEM教材について,各学年の違いに着目して,各学年におけるEDPの特徴について検討した。その結果,次の3点が明らかになった。(1)テネシー州のSTEM教育では,EDPの最終段階は学年が進行するに従い異なっている。(2)EDPでは,問題を特定し,観察・実験を通じて,結論を導くといった問題解決の過程が一致している。(3)EDPの「改善する(Improve)」の段階では,製作物がより適当に作動するかどうかといった実験の結果に基づいて,よりよい設計の改善を図ることが意図されている。わが国においても,小学校理科の問題解決の過程に,EDPの「改善する」の段階を各学年の進行に応じて,段階的に導入すると,問題解決の過程において,実験の方法をよりよく修正することと,自分の考えをよりよく修正することの2点を「改善する」ことができ,よりよい自分の考えをもつことにつながることが示唆される。