理科教育学研究
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原著論文
「科学の本質(NOS)」の創造的な理解を促す授業デザイン開発に資するアクション・リサーチ
中込 泰規加藤 圭司小倉 康
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2024 年 64 巻 3 号 p. 203-220

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抄録

本研究は,「科学とは何か」や「科学的営為」に焦点化した,科学の認識論的知識である「科学の本質(Nature of Science;以下,NOSと示す)」の創造的な理解を促す授業デザインに関する示唆を得ることを目的とする,中学校理科の事例を対象としたアクション・リサーチである。本研究では,NOSの創造的な理解を促す手立てとして,以下の3点を設定した。1点目は,カリキュラムの中心に科学史を位置付け,先哲が行ってきた研究手法や,科学理論や原理が見出された背景について学ぶことからNOSへの意識を促す「学習文脈アプローチ」である。2点目は,先哲の見方や考え方を参考にしながら,歴史上で見出された科学理論や原理を明らかにしていく科学的な探究に取り組み,その探究プロセスと関連付けてNOSへの意識を促す「探究プロセスアプローチ」である。3点目は,NOSを捉える枠組みを教師から提示し,授業時間内でNOSについて意識したことを内省する機会の設定である。中学校第3学年における「電池とイオン」 の授業実践の結果として,2つのアプローチからNOSについて意識したことを比較し,それらを統合的に捉えながら考えを構築していく生徒の姿が確認できた。また,NOSについて意識したことを内省する機会によって,NOSを継続的に捉えようとする視点の獲得や,2つのアプローチから意識したことを比較しようとする思考が促されていた。他方,学習文脈アプローチよりも,探究プロセスアプローチから促された意識の方が,生徒にとって価値付く傾向があり,NOSに関する考えを構築していく上で,影響を与える可能性がある。

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