2025 年 66 巻 1 号 p. 175-188
本研究では,2021年検定済のA社の高等学校化学基礎教科書に掲載されている全観察・実験等を対象に,長谷川ら(2013)が開発した「探究の技能」の含有率の傾向から類型化し,導出された各群の探究的特徴を明らかにすることを目的としてクラスター分析を行った。その結果,以下のことが明らかとなった。(1)高等学校化学基礎教科書に掲載されている観察・実験等は,「探究の技能」の傾向によって4つに類型化される。(2)観察・実験等の4つの類型は,「探究の技能」のうち特徴的な技能として,定量的であるかそうでないか,推論が帰納的もしくはアブダクション的であるか演繹的であるかの2つの観点で分類できる。(3)高等学校化学基礎教科書の観察・実験等は,小学校理科教科書「粒子」領域よりも演繹的に思考する傾向が強く,仮説設定や仮説検証が少ない傾向がある。(4)高等学校化学基礎教科書と中学校理科教科書「粒子」領域の観察・実験等における「探究の技能」の含有率の間に,明らかな違いは見られない。