理科教育学研究
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原著論文
小学校理科学習における子どもの科学的思考の実態に関する研究
―小学校第4学年「ものの温まり方」の単元を事例に―
栁沼 優作和田 一郎
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2025 年 66 巻 1 号 p. 189-201

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抄録

理科学習の中で,科学的概念を構築する際に機能する思考は科学的思考と称され,その育成が求められている。一連の文脈として展開される科学的探究の中で,学習者の思考も一連の流れとして関連付きながら行われると考えられる。しかしながら,科学的探究の各場面内での科学的思考については検討されているものの,場面間での関連付きなど,探究の過程における一連の科学的思考については更なる検討を要する部分である。以上を踏まえ本研究では,問題解決の過程間で関連付きながら展開されていく子どもの科学的思考の実態を明らかにすること研究の目的とした。具体的には,科学的探究の過程を4つのフェーズに細分化し,各フェーズでの科学的思考を整理したKuhn(2010)の指摘に着目し事例的分析を行った。分析の結果,本実践における探究フェーズ・分析フェーズ・推論フェーズの各フェーズで子どもがどのような科学的思考を行なっていたのか,及びそれらのフェーズ間での推移を捉えることができた。また探究フェーズから分析フェーズにかけたフェーズ間の科学的思考の推移に関して,探究フェーズにおいて探究の目的を定めることで,分析フェーズにおける妥当な分析・解釈に繋がることが示唆された。さらに,分析フェーズから推論フェーズにかけたフェーズ間の科学的思考の推移は,高次推移群と低次推移群の2つに大別された。このうち高次推移群の子どもは,描画(drawing)を介した思考・表現が機能することで,分析・解釈によって抽出した証拠を関連付けた推論の形成に繋がることが示唆された。

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