日本女性科学者の会学術誌
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総説
乳幼児突然死症候群と覚醒不全説
澤口 聡子
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2005 年 5 巻 1 号 p. 17-21

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抄録

顧著な少子高齢化の傾向にあり、かつ整備された乳幼児保健環境をほこる日本において、更なる乳幼児死亡率の改善を期待するためには、乳幼児の死因に大きな割合を占める乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome:SIDS)の減少を図ることが必要である。従来、SIDSの病因解明は、疫学的・生理学的,病理学的に個別に研究されてきたが、その原因は未知であったため、各分野の統合という視点から研究の展開を試みた。SIDSの病態仮説としては、従来から提唱されてきた無呼吸仮説と無呼吸仮説の見直しの中で浮上してきた覚醒不全説がある。前述の統合研究の結果、健康乳幼児にSIDSの疫学的リスク因子を付加した場合に覚醒傾向が減少すること、更にSIDS児にも覚醒不全があることか検証されてきた。また、覚醒不全だけではヒトは死亡しない。生理学的データと病理学的データを同一事例についてリンケージした統合研究の結果、SIDSにおいては、脳幹の覚醒経路における神経系の可塑性の不全が存在し、更に、低酸素状態に対する認知と記憶の基盤が変化し、このことが、児の死亡への引き金となっていることが推測された。

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© 2004 日本女性科学者の会

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