症例は99歳,女性。10数年前に生じた左鼻翼付近の色素斑を主訴に受診。初診時,鼻背の両側にびらんと痂皮を伴う角化性紅斑を認めた。左側の紅斑は鼻翼側に10×6mmの不整形な青黒色腫瘤を伴い,ダーモスコピーでは微小潰瘍が混在した青灰色の類円形胞巣と樹枝状血管を認めた。また右内眼角下方から頬部にかけての皺に沿って,20×2mmの線状黒色斑を認め,ダーモスコピーでは出血を伴う青灰色小球構造を呈していた。生検病理組織像では,どちらの病変も表皮と連続性に基底細胞様細胞が柵状配列を伴う胞巣を真皮内に形成しており,基底細胞癌(BCC)と診断した。局所麻酔下に5mmのマージンで切除し,右頬部は単純縫縮した。左鼻背には含皮下血管網遊離植皮を行った。線状基底細胞癌は多くがrelaxed skin tension lines(RSTL)に沿って生じており,顔面では下眼瞼や頬部に好発していた。