抄録
65歳,女性。数年前より右腰部に自覚症状を欠く皮下腫瘤があり,徐々に増大したため来院した。初診時,右腰部皮下に軽度熱感を伴う弾性硬で可動性不良,多結節に分葉する腫瘤が触知された。単純MRIを施行したところ,周囲との境界は比較的明瞭で,T1強調画像で骨格筋と等信号,T2強調画像で淡い高信号を呈する分葉状腫瘤であった。診断目的に局所麻酔下で皮下腫瘤の一部を生検した。病理組織では,摘出腫瘤は境界明瞭で,核異型の少ない線維芽細胞様の紡錘形細胞が花筵状の増生を示し,腫瘍細胞間にリンパ球,形質細胞,好酸球などを主体とした炎症細胞浸潤が高度にみられた。免疫細胞ではα-SMA,CD68が陽性,CD34,ALK,IgG4が陰性,MIB-1indexが10%であった。以上の所見より皮膚型inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)と診断した。IMTは肺,消化管に多く発症するが,皮膚に発症する例は非常に稀である。文献学的考察を加えて報告する。