2017 年 32 巻 1 号 p. 51-54
39歳,女性。20歳頃出現した顔面の紅色皮疹を主訴に当科受診。初診時,右頬部に潰瘍を伴う23×15 mm大の境界不明療な淡紅色斑を認めた。黒色調の部分はなかった。臨床的に円板状エリテマトーデスを疑い生検したところ,基底細胞癌の診断であった。拡大切除術を行い全層植皮で再建した。切除後の病理および臨床像から表在拡大型の無色素性基底細胞癌と診断した。当科で過去10年間に基底細胞癌と診断された131名のうち,臨床的に色素を有さない無色素性基底細胞癌患者は自験例を含めて8例であった。そのうち,全例が顔面に発生し,5例は紅色病変として認められた。初診時に基底細胞癌と臨床診断されていた例は1例のみであった。無色素性基底細胞癌は日本人において稀な腫瘍であり,臨床診断が困難なことも多い。顔面のびらんを伴う紅色病変をみた際には,基底細胞癌も鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要がある。