Skin Cancer
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32 巻, 1 号
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第32回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 大石 京介, 水牧 貴恵, 澤田 香織, 伊川 友香, 前田 進太郎, 濱口 儒人, 岡本 浩一, 二宮 致, 山田 忠明, 竹原 和彦
    2017 年 32 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    症例1:74歳,男性。人間ドックで施行した上部消化管内視鏡検査で中部~下部食道の腫瘤を指摘され,生検で悪性黒色腫と診断。食道全摘術と頸胸腹部リンパ節廓清術を施行。ダカルバジン,ニボルマブによる化学療法を行うも術後8ヵ月で永眠。症例2:71歳,男性。咽頭の違和感を主訴に上部消化管内視鏡で下部食道の腫瘤を指摘。生検で悪性黒色腫と診断され,食道全摘術と頸胸腹部リンパ節廓清術を施行。術後,当科でダカルバジン単剤療法を行ったが膵転移が出現し,ニボルマブの投与を行うも同剤による間質性肺炎を生じたため中止した。多臓器転移により術後11ヵ月で永眠。2例とも外科的切除により原発巣を摘出したものの術後早期に他臓器転移を生じ,化学療法に抵抗性で予後不良だった。

  • 西馬場 理恵, 東 裕子, 藤井 一恭, 吉満 誠, 金蔵 拓郎
    2017 年 32 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    38歳,女性。初診の3ヵ月前から外陰部のしこりを自覚していた。徐々に増大してきたため近医を受診したところ,生検で悪性リンパ腫が疑われ,当院を紹介された。血液や骨髄には腫瘍細胞の浸潤は認められず,PET検査では陰部腫瘤のみ異常集積を認めた。病理組織検査では,真皮から脂肪織にかけてクロマチン濃染性で小型~中型の不正核を有する腫瘍細胞の浸潤を認めた。免疫組織学的に腫瘍細胞はmyeloperoxidase,CD68,CD117に陽性であった。Myeloid sarcomaと診断し,急性骨髄性白血病に準じて,治療を行った。化学療法,放射線治療,末梢血幹細胞移植が行われたが,病状は進行し,発症から3年後に永眠した。

  • 大狩 慶治, 和田 誠, 張 財源, 小森 敏史, 浅井 純, 竹中 秀也, 加藤 則人
    2017 年 32 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    70歳,男性。2010年頃より左腋窩に結節が出現し,徐々に増大した。2015年5月に前医で前立腺癌の治療中に左腋窩の腫瘤に対し同院皮膚科を受診した。生検でアポクリン腺癌と診断され,加療目的に当科へ紹介された。左腋窩に,8.0×5.0 cm大の有茎性で表面に潰瘍を伴う易出血性の紅色腫瘤を認め,左腋窩リンパ節が腫脹していた。PET-CTでは,他臓器への明らかな転移所見はなかった。局所麻酔下に,茎部より2 cm離して腫瘍切除術と左腋窩リンパ節生検を施行した。病理組織では,真皮浅層までに好酸性の細胞質を有し,明瞭な核小体を持つ腫瘍細胞が増生し,管状構造や断頭分泌がみられた。腫瘍細胞の細胞質はPAS染色陽性でジアスターゼ抵抗性を示し,免疫染色でGCDFP-15が陽性であった。リンパ節生検で転移を認めたため,左腋窩リンパ節郭清術を施行した。有茎性を呈するアポクリン腺癌は稀と考えられた。

  • 黒川 正人, 長峯 理子
    2017 年 32 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    基底細胞腺癌は,皮膚の基底細胞癌類似の上皮細胞の増殖を認める唾液腺癌で,比較的稀なものである。本腫瘍は主に耳下腺に発生し,低悪性度であるが,局所再発率は比較的高い。
    今回我々は上口唇に生じた非常に稀な基底細胞腺癌を経験した。本症例は生検では確定診断がつかなかったが,全摘出後に基底細胞腺癌の確定診断に至り,上口唇小唾液腺由来と考えられた。
    症例は70歳,男性で,腫瘍はほぼ上口唇全層に及んでいて,臨床所見でも皮膚への浸潤を疑がった。治療は腫瘍辺縁から5 mm離して上口唇の全層切除を行い,Abbe唇弁を用いて再建を行った。また,術後50Gyの放射線照射を行った。術後の病理組織学的検査では腫瘍は表皮への浸潤は認めなかった。術後1年9ヵ月で局所の再発および転移は認めず経過良好である。

  • 角田 加奈子, 前田 文彦, 大西 正純, 高橋 和宏, 天野 博雄, 赤坂 俊英
    2017 年 32 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    2009年1月〜2015年12月の期間に岩手医科大学附属病院皮膚科において手術を施行した皮膚原発有棘細胞癌152例の集計を行い,センチネルリンパ節生検の意義,適応症例について検討を行った。病理組織学的に皮膚原発有棘細胞癌と診断した152例中76例にセンチネルリンパ節生検を施行し,6例が転移陽性で(陽性率7.9%),全てT2症例だった。転移陽性症例のうち5例に所属リンパ節郭清を施行し,いずれも現在まで再発転移なく経過している(平均観察期間28.3ヵ月)。センチネルリンパ節生検による早期のリンパ節転移の発見が,予後の改善に寄与する可能性が考えられるが,現在この点に関して確立したエビデンスは存在していない。今後,センチネルリンパ節生検の有用性に関しては,さらに症例を蓄積し,予後の観察を長期的に行い,十分なエビデンスで検証される必要があると考える。

  • 大久保 澪, 鍬塚 大, 浅井 幸, 岩永 聰, 横山 洋子, 中村 太祐, 山崎 拓也, 宇谷 厚志
    2017 年 32 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    68歳,女性。2015年3月右腋窩リンパ節腫脹を自覚した。近医でリンパ節生検をうけ悪性黒色腫と診断された。その後右背部に皮膚原発巣を指摘され,6月に前医で皮膚悪性腫瘍切除術,全層植皮術,右腋窩リンパ節廓清術を施行された。術後補助療法目的に当科を紹介され,ダカルバジン点滴とインターフェロンβ局注療法を2コース施行したが,9月に左顎下,左副腎などの多発転移に加え右脛骨,大腿骨などに多発骨転移が出現した。原発巣切除標本のBRAF変異が陽性であり,ベムラフェニブの内服を開始した。内服19日目より右脛骨,大腿骨骨転移に対し全39 Gy/13 Frの放射線照射治療を併用した。27 Gy終了時より右膝前面から膝裏にかけて紅色小丘疹と水疱が出現した。さらに照射部位に一致して境界明瞭な紅斑が出現し,33 Gy終了時は右下肢の浮腫と紫斑が出現した。重度の放射線皮膚炎と判断し,ベムラフェニブにより増感されたと考えた。

  • 矢野 有紗, 猿田 寛, 武藤 一考, 大畑 千佳, 長藤 宏司, 名嘉眞 武国
    2017 年 32 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    ハイドロキシウレアは核酸代謝拮抗薬の1つで,骨髄増殖性疾患に対して用いられる。近年,本剤の長期投与による皮膚障害の報告が増加している。症例:80歳,女性。本態性血小板増加症の診断でHUの投与が開始された。投与開始3年8ヵ月後より左踵部に皮膚潰瘍が出現し,5年後に潰瘍内に紅色結節が生じたため紹介受診となった。初診時には踵部の潰瘍と左アキレス腱部にも潰瘍を認め,両手指・手背・手掌にびまん性の紅斑やびらんを認めた。生検の結果,左踵部は有棘細胞癌,左アキレス腱部はボーエン病の診断であったため,両部位の皮膚悪性腫瘍切除術・全層植皮術を施行した。術後診断はいずれも有棘細胞癌であった。HUによる薬剤性皮膚潰瘍に有棘細胞癌が合併したものと考えた。手術後,HUを減量しアナグレリド塩酸塩水和物との併用療法を開始した。術後1年4ヵ月経過したが,再発は認めていない。

  • 中野 小百合, 岸 晶子, 石綿 夏織子, 川島 遥, 前田 成美, 吉田 亜希, 大原 國章, 林 伸和
    2017 年 32 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    症例1は51歳,男性。11年前,前医にて下腹部の4cm大の腫瘤を切除され基底細胞癌と診断。10年後,左大腿の浮腫で前医を受診し,左鼠径リンパ節,肺,左腸骨に転移あり,鼠径リンパ節と骨転移に放射線治療。翌年,陰囊に皮膚転移が出現,当科初診し化学療法を施行。症例2は73歳,女性。右第1趾間の4×3cm大の腫瘤で当科初診。基底細胞癌の診断で切除・植皮。2年後,右鼠径リンパ節が腫大し,右鼠径・骨盤リンパ節郭清。外腸骨・閉鎖リンパ節に転移あり。その5年後,健康診断で多発性肺結節を指摘され当科を再診,化学療法を施行。2例ともシスプラチン・アドリアマイシン療法でpartial responseが得られたが腎機能低下に伴い,カルボプラチン・アドリアマイシン療法に切り替え,症例2ではprogressive diseaseとなり1年3ヵ月で永眠。

  • 酒井 あかり, 藤川 大基, 木村 浄土, 富井 光一, 出口 登希子, 重原 庸哉, 阿部 理一郎
    2017 年 32 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    39歳,女性。20歳頃出現した顔面の紅色皮疹を主訴に当科受診。初診時,右頬部に潰瘍を伴う23×15 mm大の境界不明療な淡紅色斑を認めた。黒色調の部分はなかった。臨床的に円板状エリテマトーデスを疑い生検したところ,基底細胞癌の診断であった。拡大切除術を行い全層植皮で再建した。切除後の病理および臨床像から表在拡大型の無色素性基底細胞癌と診断した。当科で過去10年間に基底細胞癌と診断された131名のうち,臨床的に色素を有さない無色素性基底細胞癌患者は自験例を含めて8例であった。そのうち,全例が顔面に発生し,5例は紅色病変として認められた。初診時に基底細胞癌と臨床診断されていた例は1例のみであった。無色素性基底細胞癌は日本人において稀な腫瘍であり,臨床診断が困難なことも多い。顔面のびらんを伴う紅色病変をみた際には,基底細胞癌も鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要がある。

第31回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 表 千草, 草島 英梨香, 高橋 紀久子, 木村 中, 岩崎 沙理
    2017 年 32 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    悪性黒色腫は色素細胞や母斑細胞から生じる極めて悪性度の高い皮膚癌である。頭皮原発の頻度は低く,その予後は不良とされている。今回我々は,後頭部に発症し,臨床診断に苦慮した結節型悪性黒色腫の症例を経験した。74歳,女性。4年前に後頭部に皮疹を自覚し,翌年に当院の皮膚科を受診した。皮膚科での生検の結果,compound nevusと診断され経過を診られていたが,徐々に増大してきた。生検から2年後に当院の皮膚科を再診し,悪性を否定できないため,当科に紹介となった。全切除生検を行ったところ,悪性黒色腫の診断であった。拡大切除およびセンチネルリンパ節生検を行い,同時に回転皮弁にて閉創した。TNM分類はpT4aN0M0,病期stage IIBの診断で,術後は化学補助療法(DAVferon療法)を行った。術後8ヵ月目に全身へ転移を来し,緩和ケア病院へ転院した。

第28回日本皮膚悪性腫瘍学会
一般演題
  • 大矢 和正, 田口 詩路麻, 細井 崇弘, 丸山 陽子, 中山 凱夫
    2017 年 32 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    75歳,男性。初診1年前から左胸部に母指頭大の腫瘤が出現した。徐々に増大し左側胸部に18 cm×15 cm,弾性硬で可動性が不良な皮下腫瘤を認めた。生検組織の病理所見では顆粒細胞腫であったが,臨床的に悪性顆粒細胞種を疑い拡大切除した。表層に近い腫瘍では生検時と同様の所見を示したが,下床近傍では悪性顆粒細胞腫の診断基準を満たした。術後4年後に左側腹部痛を自覚し,造影CTで胸腹部に多発する結節がみられた。悪性顆粒細胞腫の転移と診断し,年齢を考慮し緩和ケアの方針となった。悪性顆粒細胞腫は稀な疾患であり,起源として顆粒細胞腫が悪性転化する説と,悪性顆粒細胞腫そのものが発生する2つの説がある。本症例では,顆粒細胞腫と悪性顆粒細胞腫が同一の腫瘤に混在しており,良性腫瘍が悪性化する可能性を示唆していると考えられる。今後は症例の蓄積により,その病態の解明が望まれる。

投稿論文
  • 清水 智子, 稲毛 明子, 坂本 淳, 吉池 高志
    2017 年 32 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    89歳,男性。右頬部有棘細胞癌術後,3年8ヵ月で同部位に腫瘤が出現した。再発を疑ったが,腫瘤は黒色を呈しており,生検の結果悪性黒色腫と判明した。すでに頸部リンパ節転移,肺転移,咬筋浸潤を来しており,手術適応外と考えた。Stage IVであり,高齢である本人の意思に加えて,家族も薬物療法や姑息的手術を望まず,経過観察となった。1年10ヵ月後,腫瘍表面からの出血により入院,その3週間後に永眠された。当初,有棘細胞癌の再発が疑われたが,同部位に出現した二次原発皮膚癌の症例と考えた。皮膚の重複癌や二次原発癌のリスクが,我が国ではそれほど多いとは思われていない。しかし,高齢化時代を迎えて今後より大きな注意が払われるべきであろう。この問題については議論を呼んでいる白人種における統計を基に考察を加えた。

  • 渡邊 総一郎, 岩田 洋平, 有馬 豪, 沼田 茂樹, 岩田 貴子, 鈴木 加余子, 黒田 誠, 松永 佳世子, 杉浦 一充
    2017 年 32 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    58歳,男性。10年以上前から2型糖尿病。約2年前から右足底に小水疱が出現。潰瘍を伴った腫瘤を形成してきたため,約1ヵ月前に総合病院皮膚科を受診した。部分生検の組織所見では明らかな悪性所見は認めなかったが,臨床像よりverrucous carcinomaが疑われ当科紹介受診した。MRIでは,4 cm大の腫瘍病変を認め,深部は筋付近まで浸潤していた。血液検査ではHbA1c 10.8%と重度の糖尿病を合併していた。水平1cmマージンで腱膜上での腫瘍切除と人工真皮での被覆とし,厳格な血糖コントロールおよび肉芽増生を得た後にThiersch植皮術で再建した。植皮の生着は良好で,術後1年3ヵ月経過し再発や遠隔転移は認められていない。植皮部や辺縁に胼胝も認めておらず歩行機能も全く支障はない。また,足底の皮膚悪性腫瘍に二期的な手術方法が有効であった。

  • 武藤 一考, 並川 健二郎, 中村 善雄, 高橋 聡, 堤田 新, 山﨑 直也
    2017 年 32 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    48歳,男性。幼少期より右側腹部に黒色斑を認め,徐々に結節を形成した。2013年7月当科初診となった。初診時右側腹部に潰瘍を伴う黒色結節を認め,腫大した右腋窩リンパ節を触知した。原発巣切除,右腋窩リンパ節郭清を施行し術後診断は悪性黒色腫pT4bN3M0 stage IIICとなった。転移リンパ節に被膜外浸潤を認め,右腋窩部へ術後放射線療法を行った。2015年4月施行したPETにて肺・骨・胆囊に多発転移を認めた。BRAF変異陽性でありベムラフェニブ内服を開始した。痛風腎による腎機能障害が増悪し,補液やベムラフェニブの減量や休止再開を繰り返したが,転移巣へ一定の臨床効果を得た。9月に意識障害が出現しCT・MRIで多発脳転移を認めた。ベムラフェニブを前後1.5日ずつ休薬して定位放射線照射(30 Gy/3 Fr)を施行した。意識障害は一時的に改善し,急性放射線皮膚炎やCT上明らかな頭蓋内の異常を認めなかった。

  • 吉見 公佑, 塩味 達也, 川平 尚生, 大塚 正樹, 吉川 周佐, 清原 祥夫, 林 友美, 田所 由紀子, 西村 誠一郎, 高橋 かおる ...
    2017 年 32 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    症例は49歳,女性。頭部悪性黒色腫切除後12ヵ月目のPET-CTで右乳腺内にFDGの集積を認めた。同部からの針生検を行ったところ,腫瘍は一部にメラニンを含有する細胞を認め,免疫染色でHMB45とMelan-Aが弱陽性であり,悪性黒色腫の乳腺転移と診断した。BRAF遺伝子変異陽性であったためvemurafenibの投与を開始したところ,転移病巣は著明に縮小しその後も維持していたが,投与21ヵ月後に再増大を認め,nivolumabへ変更するも縮小効果は得られなかった。しかし,画像検査で右乳腺以外には転移巣を認めなかったため,乳房部分切除術を施行した。術後6ヵ月(乳腺転移診断後42ヵ月)の現在,再発・転移を認めていない。悪性黒色腫の乳腺転移は他臓器転移を伴っていることが多く,孤立性転移は稀である。孤立性乳腺転移であれば,転移巣の切除により予後を改善する可能性がある。

  • 内海 友理, 高須 博, 三井 純雪, 秋本 峰克, 鴻池 奈津子, 武田 啓, 天羽 康之
    2017 年 32 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    症例1:65歳,女性。受診5年前より外陰部の瘙痒感が出現し,1年前より排尿時痛と陰部の腫瘤が出現した。両側大陰唇に硬化を伴う白色局面があり,左小陰唇に母指頭大の紅色結節を認め,皮膚生検にて硬化性萎縮性苔癬(LSA)に生じた有棘細胞癌(SCC)と診断した。結節より20 mm離し,LSA病変も含め切除した。センチネルリンパ節生検は陰性であった。術後2年経過したが再発転移はない。症例2:83歳,女性。受診2年前より外陰部瘙痒感と圧痛があった。両側大陰唇に白色硬化局面あり,右大陰唇に鶏卵大の腫瘤を認め,皮膚生検にてLSAに生じたSCCと診断した。腫瘤より10 mm離し,LSA病変も含め切除したが,術後2ヵ月で両鼠径リンパ節転移あり,郭清を行うも術後8ヵ月で永眠した。外陰部に生じた硬化性萎縮性苔癬は有棘細胞癌の発生母地となり得るため,可能な限り硬化性萎縮性苔癬部も含めた外科的切除が望ましいと考える。

  • 稲本 和也, 藤岡 佑介, 米谷 あずみ, 高谷 亜矢子, 内田 達也, 横川 愛, 青木 久尚
    2017 年 32 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

    73歳,男性。4ヵ月前より左踵部に赤色の糜爛と疼痛を認めたが自己処置で対応していた。徐々に増悪し皮膚科を受診,2週間の軟膏処置も改善なく悪性腫瘍疑いで当科紹介となった。初診時には潰瘍形成と周囲への染み出しや散在する黒色病変を認め,ダーモスコピーは皮丘性パターンであり生検を施行し,悪性黒色腫の診断となった。左鼠径部と左膝窩に腫大したリンパ節は触知せず,PET-CTでもリンパ節への集積を認めなかった。術前にエコーでリンパ節を確認し,術中に色素法とインドシアニングリーン(ICG)蛍光法を併用し左鼠径と左膝窩のセンチネルリンパ節を生検,膝窩リンパ節の転移を認め後日膝窩郭清術を行った。悪性黒色腫の膝窩リンパ節転移は報告例が少なく,初回手術時に診断し得た報告はさらに少ない。今回ICG法が膝窩センチネルリンパ節の検出に有用であったため,若干の文献的考察を含めて報告する。

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