抄録
森田療法の基本的な概念を紹介し,皮膚科入院治療後に入院森田療法を行った症例の検討を通して,アトピー性皮膚炎の治療における森田療法の応用について考察した。入院森田療法では,皮膚科治療を継続しながら,作業を中心とした健康的な生活を送っていく。症例の治療では,皮膚症状のつらさを充分に傾聴した上で,不安を自然なものとして扱い,不安とつきあいながら行動に踏み込むことを支えていった。生活に注目すること自体が身体状況へのとらわれから焦点を外し,自然な心身のあり方を取り戻していくことでもあり,「あるがまま」の自己と付き合うことにつながる。そうした森田療法の経験は,アトピー性皮膚炎の寛解維持につながる可能性があると考えられる。(皮膚の科学,増18: 26-30, 2012)