抄録
47歳,男性。蚊に両下腿を数ヶ所刺された翌日,蚊刺部位に水疱形成と発赤腫脹を認め,発熱が出現した。蚊刺3日目,両下腿の蚊刺部位に一致して大豆大の血疱,黒色痂皮,紫斑を認め,その周囲に広範囲に発赤腫脹がみられた。また発熱と右鼠径リンパ節腫脹を認めた。Epstein-Barr virus (EBV) viral capsid antigen (VCA)-IgG:640倍,EBV early antigen (EA)-IgG:20倍と抗体価の上昇がみられ,さらに末梢血中 EBV-DNA コピー数:79コピー/μg DNA が検出された。生検組織では表皮下より脂肪織深層までリンパ球,好酸球を主体とした炎症細胞浸潤を認めた。浸潤細胞に異型性を認めず,EBV-encoded small RNA (EBER)-1 陽性細胞はごく少数混じていた。蚊刺部位の特徴的な皮膚症状と発熱,リンパ節腫脹,EBV 検査所見から成人発症の蚊刺過敏症と診断した。成人発症の蚊刺過敏症は稀であるため報告する。(皮膚の科学,12: 117-121, 2013)