皮膚の科学
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12 巻, 2 号
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カラーライブラリー
症例
  • 古川 紗綾佳, 夏秋 優, 山西 清文
    2013 年 12 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    37歳,女性。子宮内膜症,間質性膀胱炎による慢性疼痛に対してペインクリニック部でノルスパン®(ブプレノルフィン)テープを処方された。初回に前胸部右側,1週間後(2回目)に前胸部左側,2週間後(3回目)に右上腕外側に貼付したところ,3回目に貼付した2日後より前胸部左側および右上腕外側の貼付部に一致してそう痒を伴う紅斑が出現した。パッチテストの結果,ノルスパン®テープで陽性,ブプレノルフィンを含まず基剤が同一組成の見本品で陰性であったことから,自験例をブプレノルフィンによるアレルギー性接触皮膚炎と診断した。本剤による接触皮膚炎は本邦では初めての報告であるが,今後の普及に伴う症例の増加に注意が必要である。(皮膚の科学,12: 69-73, 2013)
  • 東前 和奈, 松村 由美, 谷岡 未樹, 谷崎 英昭, 宮地 良樹
    2013 年 12 巻 2 号 p. 74-78
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳,男性。真性多血症に対しハイドロキシウレア内服を開始したところ,開始1年7ヶ月後に外踝に皮膚潰瘍が出現し踵部に拡大した。通常ハイドロキシウレア中止によって皮膚潰瘍は改善することが多いが,自験例では中止後にいったん改善したにも拘らず再燃を認めた。足潰瘍をきたす原因として,動脈および静脈性の血行障害,糖尿病,感染症,膠原病などを考え各種検査行ったが有意な所見は認めなかった。ハイドロキシウレアの細胞毒性が皮膚脆弱性を引き起こし,その結果軽微な外的刺激による皮膚潰瘍を形成し,中止後の潰瘍新生につながった可能性を考えた。外力がかからないように工夫をすることで速やかに皮膚症状は改善した。ハイドロキシウレアの中止だけでは改善しない場合,外力の影響も考慮し,工夫を加える必要がある。(皮膚の科学,12: 74-78, 2013)
  • 真鍋 蘭, 夏秋 優, 山西 清文
    2013 年 12 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    60歳,女性。左乳癌に対してアブラキサン®を投与された翌日より体幹,四肢にそう痒を伴う紅斑が出現した。5日後の初診時,体幹,四肢に播種状に紅斑,丘疹を認め,掻破痕を伴っていた。ベポタスチンベシル酸塩の内服とベタメタゾン酪酸プロピオン酸エステルの外用で,皮疹は約1週間で軽快した。本人の化学療法継続の希望に従ってアブラキサン®を再開し,投与の毎に同様の皮疹が出現したが,腫瘍は縮小した。アブラキサン®による薬剤リンパ球刺激試験は陰性で,自験例をアブラキサン®による紅斑丘疹型薬疹と診断し,非アレルギー性の機序により生じたと考えた。癌の化学療法では軽症の薬疹であれば治療を継続する選択肢もあると思われた。(皮膚の科学,12: 79-82, 2013)
  • 東 祥子, 永松 麻紀, 池田 彩, 宮崎 明子, 小澤 健太郎, 田所 丈嗣
    2013 年 12 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    49歳,女性。1999年に口腔内のびらんが出現し,四肢体幹にも拡大し,生検で尋常性天疱瘡と診断した。ステロイド内服では病勢を抑えることが困難であったため,ステロイドパルス,シクロホスファミドパルス,血漿交換,アザチオプリンなどで加療した。その後病勢は安定し,プレドニゾロンを漸減し,抗デスモグレイン1抗体,抗デスモグレイン3抗体ともに陰性化し経過は良好であった。2009年6月頃から顔面および下肢に小型のびらんを伴う紅斑が出現し,全身に拡大した。生検で有棘層最上部から顆粒層にかけて表皮内水疱と棘融解像を認め,抗デスモグレイン1抗体のみの上昇を認めた。尋常性天疱瘡から落葉状天疱瘡への移行例と考えた。(皮膚の科学,12: 83-87, 2013)
  • 椋棒 圭子, 池田 容子, 高田 香織, 磯貝 理恵子, 山田 秀和
    2013 年 12 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    65歳,女性。2ヶ月前から外陰部に痒みを伴う腫瘤を自覚した。陰核に直径 1cm 大の表面にびらんを伴う,弾性硬の腫瘤を認め,左右の大陰唇内側には光沢を伴った白斑を認めた。生検にて,硬化性萎縮性苔癬を伴う扁平上皮癌と診断した。病変部より 1cm 離して切除術を施行した。外陰部扁平上皮癌は,臨床病理学的に,閉経前後に発症しヒト乳頭腫ウイルス感染を介して発生する warty type,basaloid type と,高齢者に多く硬化性萎縮性苔癬を発生母地と示唆される keratinizing typeに分類される。keratinizing type は予後不良例が多く,慎重な経過観察を要すると考える。(皮膚の科学,12: 88-91, 2013)
  • 五木田 麻里, 小猿 恒志, 仲田 かおり, 堀川 達弥
    2013 年 12 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    アダパレン(ディフェリン®)ゲルは尋常性ざ瘡の治療薬であるが,分子標的治療薬による爪囲炎に対し効果的であることも報告されている。アダパレンの外用により分子標的治療薬による爪囲炎の改善を認めた3症例を報告する。3症例中2症例は肺癌に対するゲフェチニブ(イレッサ®)による足趾の爪囲炎,3症例中1症例は直腸癌の肺転移とリンパ節転移に対してセツキシマブ(アービタックス®)による手指と足趾の爪囲炎があり,ステロイド剤の外用等では改善しなかった。アダパレンの外用を開始したところ,いずれも1~2ヶ月後には過剰肉芽の縮小と疼痛の軽減を認めた。(皮膚の科学,12: 92-96, 2013)
  • 平野 亜由子, 岡田 みどり, 林 美沙, 東山 真里
    2013 年 12 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    52歳,男性。右下背部に直径 12.5×16.0cm のドーム状に隆起した紫紅色局面を認めた。CRP 23.4mg/dl,未治療の糖尿病(随時血糖 496mg/dl,HbA1c 12.6%)を認めた。緊急入院し,同日局所麻酔下で紫紅色部の切開排膿とデブリードマンを行い,パルス洗浄器を用い洗浄を施行した。術中所見では,紫紅色部の皮下組織は筋肉中層まで壊死に陥っていたことより壊死性筋膜炎と考えた。細菌培養検査でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出された。パルス洗浄器を用い感染コントロールした後,皮下ポケットを伴う皮膚欠損部は陰圧閉鎖療法で縮小させた後,保存的治療で瘢痕治癒した。紫紅色を呈した皮膚は壊死せず残存したため臨床経過より皮下膿瘍と診断した。自験例は未治療の糖尿病患者において背部という稀な部位に皮下膿瘍が発症した。また感染コントロールや創傷治癒が難しい症例であったが前者にはパルス洗浄器,後者に陰圧閉鎖療法が有用であったため若干の考察を行い報告する。(皮膚の科学,12: 97-102, 2013)
  • 大歳 晋平, 岩井 信策, 樋口 道生, 末木 博彦, 丸茂 健治, 岩崎 拓也, 阿南 晃子, 中村 久子
    2013 年 12 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    72歳,女性。既往歴:17歳時肺結核,50歳時シェーグレン症候群。外傷歴はない。2ヶ月前より四肢に暗紅色調の母指頭大結節が7個多発。一部では中央に小潰瘍を伴い排膿あり。非結核性抗酸菌症を疑い生検。組織:好中球性膿瘍,ラングハンス型巨細胞を混ずる肉芽腫性炎症。膿培養:小川培地で5日目に白色コロニーを形成。PCR 制限酵素を用いた hsp65 遺伝子のパターン解析から M. abscessus を同定。胸部 CT 像より肺抗酸菌症が疑われたが同菌は培養されず。クラリスロマイシン 400mg/日の単独治療により病変はやや扁平化したが, 新生もありイソニアジド 300mg/日を追加したところ9ヶ月後には皮疹は完治した。(皮膚の科学,12: 103-108, 2013)
  • 水野 麻衣, 小泉 佳奈, 角村 由紀子, 吉良 正浩, 大畑 千佳
    2013 年 12 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    85歳,女性。2011年11月頃から頸部,頭部にそう痒があった。近医を受診し,脂漏性皮膚炎の診断でステロイドを外用し一旦改善したが,その後増悪した。抗生剤,抗ウイルス薬が投与されたが改善なく,当科紹介となった。初診時 37°C 台の発熱,頸部リンパ節腫脹があり,頭部に膿疱,痂皮,紅斑と多彩な皮疹を認めた。毛髪は粗な状態で,顔面,頸部にも角化性紅斑を認めた。紅斑,膿疱部の検鏡にて真菌を認めた。創部培養から,Microsporum canis が検出され,Microsporum canis によるケルスス禿瘡と診断した。自験例ではテルビナフィン内服のみでは著効を認めず,痂皮除去とテルビナフィンの外用を併用して症状の改善を得た。(皮膚の科学,12: 109-112, 2013)
  • 堺 美由紀, 大久保 佳子, 高河 慎介, 沢田 泰之, 濱木 珠恵
    2013 年 12 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    73歳,男性。急性骨髄性白血病に対し化学療法中,右側腹部の回腸導管ストマ周囲のパウチ貼付部位にびらんを認めた。その後びらんは上皮化せず潰瘍となり,急速に黒色壊疽となりドーム状に隆起した。壊疽部位の病理組織像では真皮,皮下組織は変性,壊死し,好酸性に染まる菌糸をびまん性に認めた。菌糸は細胞壁が厚く,中隔がなく,細胞質は透けていた。血管内にも菌糸が充満し塞栓を形成していた。菌糸の形態からムコール症と診断した。血管内に菌糸を認めたが抗真菌薬投与は行わず局所処置のみで治癒した。(皮膚の科学,12: 113-116, 2013)
  • 平野 亜由子, 岡田 みどり, 林 美沙, 東山 真里, 福本 隆也, 浅田 秀夫
    2013 年 12 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    47歳,男性。蚊に両下腿を数ヶ所刺された翌日,蚊刺部位に水疱形成と発赤腫脹を認め,発熱が出現した。蚊刺3日目,両下腿の蚊刺部位に一致して大豆大の血疱,黒色痂皮,紫斑を認め,その周囲に広範囲に発赤腫脹がみられた。また発熱と右鼠径リンパ節腫脹を認めた。Epstein-Barr virus (EBV) viral capsid antigen (VCA)-IgG:640倍,EBV early antigen (EA)-IgG:20倍と抗体価の上昇がみられ,さらに末梢血中 EBV-DNA コピー数:79コピー/μg DNA が検出された。生検組織では表皮下より脂肪織深層までリンパ球,好酸球を主体とした炎症細胞浸潤を認めた。浸潤細胞に異型性を認めず,EBV-encoded small RNA (EBER)-1 陽性細胞はごく少数混じていた。蚊刺部位の特徴的な皮膚症状と発熱,リンパ節腫脹,EBV 検査所見から成人発症の蚊刺過敏症と診断した。成人発症の蚊刺過敏症は稀であるため報告する。(皮膚の科学,12: 117-121, 2013)
  • 鈴木 健晋, 青島 正浩, 橋爪 秀夫, 伊藤 泰介, 戸倉 新樹
    2013 年 12 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    42歳,女性。初診3週間前に,左側腹部にそう痒性皮疹が出現した。皮疹は線状の紅斑であり,皮膚症状の発現約1ヶ月前に青森産の生シラウオを摂食しているため,日本顎口虫による皮膚爬行症を疑った。イベルメクチンによる内服治療を開始し,一旦軽快した。しかしその1ヶ月後,症状が再燃したため再投与し,治癒した。日本顎口虫の抗体価は測定が困難なため,交差反応性を示すドロレス顎口虫に対する抗体価を測定しその推移にて評価した。この経過中,ドロレス顎口虫に対する抗体価は徐々に低下し,治療効果判定に有用であると考えられた。(皮膚の科学,12: 122-125, 2013)
  • 島本 紀子, 安東 亮宏, 吉川 義顕
    2013 年 12 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/02
    ジャーナル 認証あり
    左側下顎智歯の抜歯後に左側の眼瞼,頬部および頸部が腫脹した症例を経験した。42歳,女性。当科初診時左眼瞼から頸部にかけて著明な腫脹を認め,血管性浮腫を疑ったが,頬部の触診にて握雪感があり,X線写真と単純 CT にて皮下気腫と縦隔気腫を認めた。経過より抜歯時に用いたエアタービンによる圧縮空気の軟部組織への送気が原因で生じた皮下気腫および縦隔気腫と診断した。歯科治療により生じる皮下気腫や縦隔気腫の報告は稀であるが,近年の歯科治療器具の進歩により,空気圧の高いエアタービンやエアシリンジが使用されるため発生例が増加しているので,皮膚科医も知っておくべき病態であると考えた。(皮膚の科学,12: 126-130, 2013)
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