抄録
52歳,女性。約30年前より右腋窩に皮下腫瘤が存在し,徐々に増大してきた。初診時,右腋窩に径 3cm で皮膚と軽度癒着した弾性硬の皮下腫瘤を触知し,これと連続する示指頭大の腫瘤を下床に認めた。副乳や汗腺腫瘍を疑い,局所麻酔下に腫瘤を切除縫縮した。病理組織像では,腫瘤は腺管上皮細胞と筋上皮細胞の2層構造からなるスリット状の管腔と浮腫性の間質から構成されており,乳腺線維腺腫に相当する所見であった。また,この腫瘤の周囲には乳腺組織を認めた。以上より本症例を副乳に発生した乳腺線維腺腫と診断した。腋窩に腫瘤を認めた場合,副乳およびそれ由来の良性・悪性腫瘍も考慮すべきと考えられた。(皮膚の科学,12: 336-338, 2013)