皮膚の科学
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症例
膀胱直腸障害を伴った帯状疱疹の2例
濱井 公平高岡 佑三子小嶌 綾子野村 尚志松井 美萌
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2014 年 13 巻 2 号 p. 93-96

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抄録

患者1:73歳,男性。当科初診の数日前に臀部に有痛性の紅斑,水疱を自覚し,その後皮疹が全身性に広がるとともに尿閉,排便困難をきたした。膀胱直腸障害を伴う汎発型帯状疱疹の診断にて,入院下にアシクロビル 750mg/日で7日間点滴投与した。便秘症状は緩下剤内服にて間もなく改善した。排尿障害に対しては,尿道バルーンカテーテル留置下に臭酸ジスチグミン 15mg/日の内服で加療を開始した。皮疹が改善したために退院したが,退院後も自己導尿法にての排尿管理を継続し,その抜去に1ヶ月を要した。患者2:75歳,女性。当科初診の数日前に臀部に有痛性の紅斑,水疱を自覚し,排尿困難感も出現した。膀胱直腸障害を伴う帯状疱疹の診断のもと,泌尿器科対診にて排尿障害に伴う膀胱炎の併発と診断された。入院してそれぞれ7日間,アシクロビル 750mg/日の点滴および塩酸セフカペンピボキシル 300mg/日,臭酸ジスチグミン 15mg/日を内服して加療し,皮疹,排尿排便障害ともに改善したために退院した。今回,膀胱直腸障害をともなう帯状疱疹の2例を経験したが,どちらもステロイド全身投与することなしに排尿排便障害は改善した。運動麻痺を伴う帯状疱疹に対するステロイド全身投与に関して,ハント症候群ではその適応となるが,膀胱直腸障害を伴うものに関しての有効性はまだ確立されていない。今後さらに症例を蓄積し,有効性を検討する必要がある。(皮膚の科学,13: 93-96, 2014)

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© 2014 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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