皮膚の科学
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症例
初回治療から10年を経過して再発・転移した頭部アポクリン腺癌の 1 例
松井 麻里大下 彰史五影 志津小森 敏史浅井 純加藤 則人
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2021 年 20 巻 4 号 p. 314-319

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抄録

65歳,男性。生下時から後頭部に常色局面を認めていた。当科初診の10年前に同部位から紅色結節を生じたため,前医を受診した。皮膚生検を施行され,アポクリン腺癌と診断された。拡大切除および全層植皮術を施行され,病理組織学的所見より脂腺母斑から生じたアポクリン腺癌と診断された。 再発・転移なく経過していたが, 1 年前から前回植皮部の辺縁に皮下結節を生じ,前医を再受診した。右鎖骨上窩リンパ節腫脹があり,それぞれ生検を施行されアポクリン腺癌の再発・リンパ節転移と診断された。精査加療目的に当科を紹介され受診した。画像検査では遠隔転移を認めず,拡大切除および右頸部リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的所見から頸部リンパ節の節外浸潤を認め,術後放射線化学療法を行った。現在, 3 年経過したが,再発・転移はみられない。アポクリン腺癌は長期間経過後に再発・転移することがあるため,長期にわたり経過観察する必要がある。また,進行期アポクリン腺癌に対しては有効な治療法はいまだ確立されておらず,今後の症例の蓄積が期待される。 (皮膚の科学,20 : 314-319, 2021)

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© 2021 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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