皮膚の科学
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症例
左右の腸骨部に生じた特発性皮膚石灰沈着症の 1 例
多田 真知花大塚 俊宏森脇 真一
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2021 年 20 巻 4 号 p. 320-324

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抄録

77歳,女性。 3 ヶ月前より,左右腸骨部の皮下腫瘤を自覚した。増大傾向があるため当科を受診した。初診時,左腸骨部に手掌大の弾性やや硬の皮下腫瘤を,右腸骨部には 4×2cm大,表面に紅色隆起局面,周囲に軽度癒着のある皮下腫瘤を認めた。左右の腸骨部皮下腫瘤より生検を施行したところ,病理組織学的にはいずれも真皮から皮下組織に至る広汎な石灰沈着がみられた。血液検査ではCaPPTH 値は正常で,膠原病関連の各種自己抗体価や腫瘍マーカーにも異常はみられなかった。 骨盤部 CT 検査では左右の大臀筋外側の皮下脂肪内に石灰化主体の軟部影を認めた。以上より,本症例を特発性皮膚石灰沈着症(tumoral calcinosis)と診断した。初診時以降は増大傾向がなかったため,全摘出は行わず, 3 ヶ月に 1 回経過観察している。現在診断から 1 9 ヶ月経過しているが左右腸骨部の皮下腫瘤の大きさに変化はない。本邦における皮膚科領域での tumoral calcinosis の報告例は1983年以降で16件であり,その内多発例は自験例を含めて 3 件のみであった。腸骨部の皮下腫瘤をみた場合,多発であっても皮膚石灰沈着症も鑑別疾患の一つとして挙げる必要がある。 (皮膚の科学,20 : 320-324, 2021)

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© 2021 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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