皮膚の科学
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症例
局所陰圧洗浄療法が著効した巨大癰の 2 例
水田 綾清水 奈美亀井 千紗都中川 浩一鶴田 大輔
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2022 年 21 巻 1 号 p. 27-33

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抄録

症例 1:70歳,男性。右上背部に腫瘤と疼痛を自覚し当科を受診した。中心部に壊死組織,周囲に多数の膿栓を伴う直径 30 cm 大の暗赤色局面を認め,癰と診断した。アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム点滴を開始しデブリードマンの後,第2030病日まで局所陰圧洗浄療法を行った。全層植皮術で再建し第80病日に退院した。症例 2:74歳,男性。体動不能を主訴に当院救急外来受診。左上背部に,中央部に壊死組織,周囲に多数の膿栓を伴う直径 23 cm 大の暗赤色局面を認めた。メロペネム点滴を開始し,症例 1 と同様に局所陰圧洗浄療法を行った。巨大癰はほぼ全例で糖尿病を合併しているため重症化しやすく,早期の治療介入を要する。近年,巨大癰のような広範囲の欠損創には陰圧閉鎖療法を行った報告が多い。一方,陰圧洗浄療法は創傷治癒と感染創の双方に速やかなアプローチが可能であり,病早期から使用できる利点がある。実際,自験例では短期間に良好な肉芽形成を得る事ができた。巨大癰に対し,陰圧洗浄療法は非常に良い適応と考えられた。 (皮膚の科学,21 : 27-33, 2022)

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© 2022 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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