皮膚の科学
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21 巻, 1 号
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症例
  • 廣田 菜々子 , 鈴木 緑 , 加藤 麻衣子 , 柳原 茂人, 遠藤 英樹 , 大磯 直毅 , 川田 暁 , 大塚 篤司 , 田中 薫 , ...
    2022 年 21 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    64歳,女性。初診の 1 年前に右外耳道癌と診断され,右外側側頭骨切除術,術後放射線療法ならびに化学療法を施行していた。術後 1 年後に右外耳道癌の再発を認めたため,ニボルマブ投与開始となった。開始後12日後より口唇びらんが出現し,四肢・体幹に紅斑が拡大したため,当科紹介受診となった。臨床症状,病理組織所見よりニボルマブによる Stevens-Johnson 症候群と診断した。ステロイドパルス療法,血漿交換,免疫グロブリン大量静注療法にて改善した。ニボルマブに関連する有害事象の重症化を防ぐためには早期の治療介入や集学的治療が必要であり,今後同様の症例報告の集積が望まれる。 (皮膚の科学,21 : 1-5, 2022)

  • 大桑 槙子 , 中村 敬
    2022 年 21 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    77歳,女性。初診 1 ヶ月前から右下腿伸側に有痛性の浸潤性紅斑が出現した。ステロイド外用を行い潰瘍化せず一旦消退したが,間もなく内側に同様の新規病変が出現,屈側へ拡大し難治となった。 皮膚生検で乾酪壊死を伴わない脂肪織小葉の肉芽腫性炎症を認め,27年前に肺結核治療歴があり TSPOTR 陽性,ツベルクリン反応陽性であった。活動性結核は明らかでなかった。呼吸器内科併診にて抗結核薬 4 剤の内服を開始すると約 3 ヶ月で皮疹は概ね軽快し,Bazin 硬結性紅斑(EI)と診断した。近年,非典型的な EI の報告が増加傾向にある。背景に患者の高齢化や薬剤,基礎疾患による宿主の免疫状態の変化があると考えられている。本症例も 2 度の悪性腫瘍既往や高齢発症であることが,非典型的な臨床像に寄与した可能性を考える。本例では,皮疹が片側性であることや一旦寛解したようにみえたことから診断と治療が遅れたという反省点がある。非典型例の存在を含めて EI の特性を熟知することが,早期の治療介入に重要と思われた。 (皮膚の科学,21 : 6-9, 2022)

  • 宗元 紗和 , 佐々木 洋香 , 土原 佳与 , 湊 はる香, 樋上 敦 , 工藤 比等志 , 澤良木 詠一, 梅原 康次 , 堀尾 修 , ...
    2022 年 21 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    頸部片側に近接して多発する基底細胞癌の 2 例を経験した。 2 例とも in-transit 転移を伴う悪性黒色腫を疑われて紹介受診した。 1 例目は術前に悪性黒色腫との鑑別ができず,全病変を一塊として切除後に基底細胞癌と判明した。 2 例目は表在型の病変もあったことから,初診時に基底細胞癌と診断することができた。in-transit 転移を伴う悪性黒色腫との鑑別を要する疾患として,近接して多発する基底細胞癌を認識する必要があると考えた。 (皮膚の科学,21 : 10-14, 2022)

  • 小池 隆弘 , 國府 拓 , 速水 拓真 , 加太 美保, 加藤 威 , 田中 俊宏 , 立花 隆夫 , 藤本 徳毅
    2022 年 21 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    66歳,男性。初診の10年前に左鼠径部から陰嚢にかけて境界明瞭な紅斑とびらんが出現した。近医を受診し,皮膚生検で乳房外 Paget 病と診断された。1cmマージンでの腫瘍切除術,左鼠径リンパ節郭清術を施行した。病理組織検査より乳房外 Paget pT2N2M0 Stage IIIb と診断した。術後 1 3 ヶ月に PET-CT 検査で,腹腔内リンパ節転移を認め,ドセタキセル(DOC)療法を開始した。その後,内臓転移は認めなかったが,DOC療法34クール施行後に構音障害と左上肢の巧緻運動障害を認めた。造影 MRI で右中心後回下部に単発性腫瘤を認め,脳転移と判断した。単発であったことと,神経障害があったことから開頭腫瘍摘出術を施行した。摘出術施行により神経障害は改善した。 脳転移を来した乳房外 Paget 病の報告例をまとめ,乳房外 Paget 病の脳転移に対して開頭摘出術がQuality of life の向上に有効となる可能性について考察した。 (皮膚の科学,21 : 15-19, 2022)

  • 加太 美保 , 前田 泰広 , 國府 拓 , 藤本 徳毅
    2022 年 21 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    88歳,男性。初診の 2 ヶ月前より右頬部に皮膚結節が出現した。右頬部に 25×20 mm 大の紅色結節を認め,皮膚生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した。免疫組織化学染色で bcl-2 c myc が陽性の予後不良な double-expressor lymphoma であり,PET-CT 検査で上顎洞にも病変があることや高齢であることより,血液内科では標準的な化学療法の適応はないと判断された。しかし,急速に右頬部の腫瘍が増大し開眼障害をきたしてきたため,ラステットR カプセルの内服を開始すると同時に右頬部の腫瘍切除術を施行し,右頬部および上顎洞に放射線治療も追加した。その後,上顎洞には腫瘍の残存はあるもののこれらの集学的治療により上頬部の局所再発も認めず良好に経過している。高悪性度で予後不良が予測されても,皮膚病変が単発の場合などは外科的切除も十分検討されるべき治療法であると思われた。 (皮膚の科学,21 : 20-26, 2022)

  • 水田 綾 , 清水 奈美 , 亀井 千紗都 , 中川 浩一 , 鶴田 大輔
    2022 年 21 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:70歳,男性。右上背部に腫瘤と疼痛を自覚し当科を受診した。中心部に壊死組織,周囲に多数の膿栓を伴う直径 30 cm 大の暗赤色局面を認め,癰と診断した。アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム点滴を開始しデブリードマンの後,第2030病日まで局所陰圧洗浄療法を行った。全層植皮術で再建し第80病日に退院した。症例 2:74歳,男性。体動不能を主訴に当院救急外来受診。左上背部に,中央部に壊死組織,周囲に多数の膿栓を伴う直径 23 cm 大の暗赤色局面を認めた。メロペネム点滴を開始し,症例 1 と同様に局所陰圧洗浄療法を行った。巨大癰はほぼ全例で糖尿病を合併しているため重症化しやすく,早期の治療介入を要する。近年,巨大癰のような広範囲の欠損創には陰圧閉鎖療法を行った報告が多い。一方,陰圧洗浄療法は創傷治癒と感染創の双方に速やかなアプローチが可能であり,病早期から使用できる利点がある。実際,自験例では短期間に良好な肉芽形成を得る事ができた。巨大癰に対し,陰圧洗浄療法は非常に良い適応と考えられた。 (皮膚の科学,21 : 27-33, 2022)

  • 清水 千尋, 立石 千晴, 今西 明子, 白鳥 隆宏, 前川 直輝, 鶴田 大輔, 橋本 隆, 泉 健太郎, 深井 和吉
    2022 年 21 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    69歳,女性。初診の 1 ヶ月前より,両上肢,体幹に水疱,紅斑が出現し,近医にて伝染性膿痂疹が疑われ,抗菌薬の内服,外用で加療されたが軽快しないため,当科を受診した。初診時,背部,両上肢にびらん,痂疲,色素沈着をともなった軽微な浸潤性紅斑や緊満性水疱を認めた。病理組織学的所見では再生上皮を伴った表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法では C3 が基底膜に線状に沈着していた。また,CLEIA 法による血清抗 BP180 NC16A 抗体,抗デスモグレイン 1 抗体,抗デスモグレイン 3 抗体,ELISA 法による血清抗 BP230 抗体はすべて陰性であった。ヒト皮膚表皮抽出液を用いた免疫ブロット法において BP230 が陽性であった。プレドニゾロン 15 mg 内服投与を開始し,糖尿病治療のため 2 年半内服していたテネリグリプチンを入院 9 日目より中止した。以後皮疹は速やかに改善傾向を示し,プレドニゾロンも漸減,50日後に中止したが,皮疹の再燃はなかった。近年,経口血糖降下薬である dipeptidyl peptidase-4DPP-4)阻害薬内服後に発症した類天疱瘡が多く報告されており,自験例のように ELISA/CLEIA 法にて抗 BP180 NC16A 抗体は陰性で,ELISA 法にて全長BP180 抗体が陽性である症例が多いといわれている。また,自験例では免疫ブロット法で BP230 抗体が陽性であった。近年の研究では抗 BP230 抗体が水疱性類天疱瘡における水疱形成に関連している可能性も示唆されており,今後その役割について検討していくことは DPP-4 阻害薬関連類天疱瘡の発症機序を考えるうえで意義があると考える。 (皮膚の科学,21 : 34-38, 2022)

  • 加太 美保 , 高山 悟 , 山本 文平 , 立花 隆夫 , 藤本 徳毅
    2022 年 21 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    71歳,女性。初診の約30年前より右腋窩に皮膚腫瘤があるのに気付いており,12年前に近医で全摘出術を施行された。その 1 年後に再発したが放置していた。咳嗽症状に対し施行された胸部 CT で,多発肺転移を疑う結節影を指摘された。腋窩の皮膚腫瘤からの皮膚生検で腺様嚢胞癌が疑われ,当科を受診した。初診時,右腋窩に 45×30 mm 大の紅色腫瘤を認めた。皮膚原発腺様嚢胞癌の局所再発,所属リンパ節転移および両側多発肺転移と診断し,腫瘤に対して姑息的切除を行い,肺病変に対してドセタキセルの投与を約 1 年間施行した。重篤な尿路感染の発症および肺病変の増大がみられたため,ドセタキセルは中止してその後は経過観察のみとした。初診から約 5 年で原疾患により死亡した。皮膚原発の腺様嚢胞癌は比較的稀な腫瘍であり,一般に,唾液腺原発の腺様嚢胞癌に比べて予後良好とされているが,過去の症例を調べてみると,自験例のように局所再発することが多く,遠隔転移することも決して稀ではない。また,局所再発や遠隔転移が初診から 5 年以上経過してからみられることも多い。そのため,皮膚原発の腺様嚢胞癌は,初期に十分な切除と長期的な経過観察が必要な疾患であると思われた。 (皮膚の科学,21 : 39-45, 2022)

  • 杉浦 周嗣 , 北村 真人 , 加藤 威 , 藤本 徳毅 , 布施 まゆか , 中西 健史 , 田中 俊宏
    2022 年 21 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/21
    ジャーナル 認証あり

    62歳,男性。初診の半年前より頸部の皮下腫瘤を自覚した。胸部,背部にも腫瘤が出現したため近医を受診した。皮膚切除標本にて真皮内に豊富な胞体を持つ大きな組織球がびまん性に浸潤し,一部の組織球の細胞質内には,形態の良く保たれた好中球やリンパ球などが観察される emperipolesis が見られた。Rosai-Dorfman 病を疑われ,当科へ紹介となり受診した。当科初診時に右上腕の皮下腫瘤 2 ヶ所を,診断目的に局所麻酔下に切除した。病理組織検査では,前医と同様の組織像が真皮深層から脂肪織に見られ,また免疫組織化学染色では S-100 陽性,CD68 陽性,CD1a 陰性の組織球が見られ,Rosai-Dorfman 病と確定診断した。現在 3 ヶ月毎の経過観察を行っているが,臓器の圧迫や気道内病変を生じることなく 2 年間が経過している。本邦の2014年から2019年に報告された RosaiDorfman 病の症例では,45歳以上の女性が約半数を占め,部位に関しては皮膚が最も多く,続いて頸部が多かった。米国では若年発症の報告が多いが,本邦では高齢の報告が多く,何らかの人種差・地域差がある可能性を考えた。また,本症例はアジア人では稀とされる全身性 Rosai-Dorfman 病の 1 例である。 (皮膚の科学,21 : 46-52, 2022)

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