62歳,男性。初診の半年前より頸部の皮下腫瘤を自覚した。胸部,背部にも腫瘤が出現したため近医を受診した。皮膚切除標本にて真皮内に豊富な胞体を持つ大きな組織球がびまん性に浸潤し,一部の組織球の細胞質内には,形態の良く保たれた好中球やリンパ球などが観察される emperipolesis が見られた。Rosai-Dorfman 病を疑われ,当科へ紹介となり受診した。当科初診時に右上腕の皮下腫瘤 2 ヶ所を,診断目的に局所麻酔下に切除した。病理組織検査では,前医と同様の組織像が真皮深層から脂肪織に見られ,また免疫組織化学染色では S-100 陽性,CD68 陽性,CD1a 陰性の組織球が見られ,Rosai-Dorfman 病と確定診断した。現在 3 ヶ月毎の経過観察を行っているが,臓器の圧迫や気道内病変を生じることなく 2 年間が経過している。本邦の2014年から2019年に報告された RosaiDorfman 病の症例では,45歳以上の女性が約半数を占め,部位に関しては皮膚が最も多く,続いて頸部が多かった。米国では若年発症の報告が多いが,本邦では高齢の報告が多く,何らかの人種差・地域差がある可能性を考えた。また,本症例はアジア人では稀とされる全身性 Rosai-Dorfman 病の 1 例である。 (皮膚の科学,21 : 46-52, 2022)