2022 年 21 巻 1 号 p. 39-45
71歳,女性。初診の約30年前より右腋窩に皮膚腫瘤があるのに気付いており,12年前に近医で全摘出術を施行された。その 1 年後に再発したが放置していた。咳嗽症状に対し施行された胸部 CT で,多発肺転移を疑う結節影を指摘された。腋窩の皮膚腫瘤からの皮膚生検で腺様嚢胞癌が疑われ,当科を受診した。初診時,右腋窩に 45×30 mm 大の紅色腫瘤を認めた。皮膚原発腺様嚢胞癌の局所再発,所属リンパ節転移および両側多発肺転移と診断し,腫瘤に対して姑息的切除を行い,肺病変に対してドセタキセルの投与を約 1 年間施行した。重篤な尿路感染の発症および肺病変の増大がみられたため,ドセタキセルは中止してその後は経過観察のみとした。初診から約 5 年で原疾患により死亡した。皮膚原発の腺様嚢胞癌は比較的稀な腫瘍であり,一般に,唾液腺原発の腺様嚢胞癌に比べて予後良好とされているが,過去の症例を調べてみると,自験例のように局所再発することが多く,遠隔転移することも決して稀ではない。また,局所再発や遠隔転移が初診から 5 年以上経過してからみられることも多い。そのため,皮膚原発の腺様嚢胞癌は,初期に十分な切除と長期的な経過観察が必要な疾患であると思われた。 (皮膚の科学,21 : 39-45, 2022)