2022 年 21 巻 3 号 p. 162-169
70歳,女性。初診 2 ヶ月前から腹部に水疱が出現し,その後,紅斑と水疱が全身へ拡大した。近医で皮膚生検の病理結果と抗 BP180 抗体高値から,水疱性類天疱瘡(BP)と診断された。糖尿病に対して処方されていた DPP-4 阻害薬を休薬し,プレドニゾロン(PSL)25 mg/日で加療されたが皮疹が改善せず,当科を紹介されて受診した。当科入院後,PSL 45 mg/日投与中に皮下出血や血疱,口腔内の粘膜下血腫,黒色便などの出血傾向が出現した。PT 正常,APTT 延長,クロスミキシング試験がインヒビターパターンを示し,第 VIII 因子活性低下などの検査所見から,後天性血友病A(AHA)と診断した。PSL 増量(50 mg/日)とシクロホスファミド追加,止血製剤投与で治療開始した。血友病の病勢改善は緩徐であったが,止血製剤の定期投与を継続し,発症から約 5 ヶ月後に AHA は寛解した。AHA の治療中,BP は新規皮疹無く経過良好であった。その後,PSL を漸減し,初診後15ヶ月時点で BP,AHA どちらも再燃することなく経過している。HLA 型検索をしたところ,DPP 4 阻害薬関連 BP の発症に関連する HLA DQB1*03:01 を有していた。AHA は1.4∼4.5%に皮膚疾患が合併し,中でも BP の報告が散見される。自験例は BP に対する PSL 投与中に AHA を発症し,治療抵抗性を示したが,免疫抑制療法と止血製剤の継続で寛解に至った。AHA はまれな病態であるが,BP の致死的な合併症になりうる。出血傾向の早期発見と,他科との連携による治療が重要である。 (皮膚の科学,21 : 162-169, 2022)