皮膚の科学
Online ISSN : 1883-9614
Print ISSN : 1347-1813
ISSN-L : 1347-1813
症例
線状苔癬の発症過程についての仮説提示
―帯状疱疹後に発症した成人多発例の皮疹分布からの推論―
澤田 智也奥平 尚子大橋 理加辻岡 馨太田 孝
著者情報
ジャーナル 認証あり

2022 年 21 巻 3 号 p. 175-180

詳細
抄録

60歳,男性。アトピー性皮膚炎の既往はない。右下腿の帯状疱疹と診断され,抗ウイルス薬内服により略治した。その後左胸部から左上腕にかけて,下腹部正中から左側腹にかけて,左大腿から下腿にかけて,計 3 ヶ所に線状に配列する皮疹が出現した。自覚症状はなく,多数の淡紅色丘疹が一部集簇し,Blaschko 線に沿って連続的ないし非連続的に分布していた。病理組織学的に表皮は不規則に肥厚し,リンパ球侵入,個細胞壊死を伴い,基底層は液状変性を示した。真皮浅層では帯状のリンパ球浸潤やメラニンの滴落を認め,真皮中層の血管や汗管周囲にもリンパ球が浸潤していた。線状苔癬と診断し,0.1%タクロリムス軟膏外用を試みたところ約 6 週で皮疹は扁平化し,約15週後に色素沈着となった。線状苔癬の病因は不明であるが,何らかの遺伝子変異を有するケラチノサイトがモザイクとして Blaschko 線上に潜在的に存在しているところに,後天的な免疫反応が加わり皮疹が誘発されるのではないかと考えられている。しかし,本症例で認められたような下腹部正中の皮疹の分布をこの考え方で説明するのは難しい。そこで Blaschko 線との関係を再考した結果,線状苔癬の皮疹は同一クローンの領域に出現するのではなく,異なるケラチノサイトのクローンの境界部に出現するのではないかという仮説に到達した。この仮説により他の皮疹の特徴も説明しうることを示した。 (皮膚の科学,21 : 175-180, 2022)

著者関連情報
© 2022 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
前の記事 次の記事
feedback
Top