2022 年 21 巻 4 号 p. 283-287
36歳,男性。脳動静脈奇形に対し右大腿動脈穿刺でカテーテルを用いた塞栓療法を施行した。その 3 日後に右足に疼痛を伴う紫斑を認め,コレステロール結晶塞栓症(cholesterol crystal embolism :CCE)を疑い,紫斑を皮膚生検した。病理組織で真皮中層の血管内に粘液様の淡好塩基性無構造物を認め,皮膚親水性ポリマー塞栓症(hydrophilic polymer embolism : HPE)と診断した。症状は約10日間で自然治癒した。皮膚 HPE は,カテーテルなどの血管内治療用デバイスの被膜剤として用いられる親水性ポリマーコーティングが剥離することで発症するといわれている。デバイス同士の摩擦,動脈硬化症による石灰化沈着で血管内が狭窄していると血管壁とデバイスの摩擦が危険因子となる。HPEの既報告はすべて動脈硬化性疾患を有する高齢者であるが,自験例は若年であり,基礎疾患は先天性疾患で動脈硬化を有さないため,デバイス同士の摩擦で HPE を発症したと考えた。HPE と CCE を臨床的に鑑別するのは困難だが,予後や治療方針が異なるため,積極的に皮膚生検を行い鑑別する必要がある。 (皮膚の科学,21 : 283-287, 2022)