皮膚の科学
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症例
前立腺癌を合併した外陰部浸潤性乳房外 Paget 病の 1 例
曽我 りか子勝田 来未宇田 絵美角田 佳純猿喰 浩子
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2023 年 22 巻 3 号 p. 208-216

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抄録

72歳男性。初診 1 年前より,陰嚢左側∼会陰にかけて腫瘤を認め,徐々に増大してきたため当科紹介となった。病変は潰瘍化を伴う易出血性の巨大腫瘤であり,周囲には境界不明瞭な紅斑や脱色素斑を認めた。皮膚生検にて乳房外 Paget 病(extramammary Paget’s disease,以下 EMPD)と診断し,針生検にて鼠径リンパ節転移が確認された。また,全身検索にて前立腺癌,多発リンパ節腫大,肺,肝臓,骨に転移性腫瘍の所見を認めた。遠隔転移の原発がいずれの腫瘍か判然とせず,EMPD も前立腺癌も進行期であったため手術療法は困難と考えられた。治療選択肢の観点や本人の希望により,全身治療については前立腺癌を優先することとなり,抗アンドロゲン療法と陰部 EMPD への放射線照射にて治療を開始した。PSA の低下と陰部腫瘤の著明な縮小を認めたが,肝転移が悪化し,初診から 7 ヶ月後に永眠された。結果として遠隔転移は EMPD によるものと考えられたが,自験例は 2 つの進行癌が並存し,治療方針の決定に難渋した症例であった。近年,EMPD の発症と増殖にアンドロゲンとその受容体が関与する可能性が指摘されている。EMPD と前立腺癌が合併した報告例も散見され,発症機序や治療が共通する可能性があり,今後症例の蓄積が望まれる。 (皮膚の科学,22 : 208-216, 2023)

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© 2023 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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