2023 年 22 巻 3 号 p. 217-223
71歳女性,卵巣癌の既往歴あり。 3 年前から増大する左大腿の腫瘤を主訴に前医を受診し,皮膚生検で脂腺癌を疑われ当科を紹介受診した。左大腿に径 3cmの紅色腫瘤を認め全摘出し,脂腺癌と診断した。更に 1 ヶ月後に右上腕の紅色腫瘤を切除し,脂腺腺腫と診断した。免疫組織化学染色で腫瘍細胞に MSH2,MSH6 の発現がみられなかったため,Muir-Torre 症候群を疑い消化器内科を紹介したところ,大腸ファイバー検査で盲腸癌および横行結腸癌を認めた。多発する脂腺系腫瘍を認め,Muir-Torre 症候群を示唆する病理組織所見を認めた場合には,積極的に免疫組織化学染色で DNA ミスマッチ修復蛋白の欠損をスクリーニングすることで,Muir-Torre 症候群の早期診断,内臓悪性腫瘍の早期発見が期待できる。 (皮膚の科学,22 : 217-223, 2023)