2025 年 24 巻 1 号 p. 14-19
51歳,男性。初診の半年前,不安神経症増悪により1ヶ月程度長時間臥床していた。初診の3ヶ月前,仙骨部の圧痛を伴う軟らかい皮下腫瘤を自覚し,徐々に増大してきたため当科に紹介受診となった。仙骨部に直径 4 cm 大,弾性軟,下床との可動性はやや不良の皮下腫瘤を認めた。MRI では,仙骨部筋膜上に T1 強調像および T2 強調像で低信号,脂肪抑制変化のない皮下腫瘤を認めた。全摘切除時の病理組織学的検査では,真皮深層から皮下に結節性病変が存在した。結節の中心部では細胞成分が乏しくフィブリノイド変性を伴う壊死像,辺縁部では血管増生,浮腫状間質,線維化を伴う肉芽組織があり,細胞の多形性がみられた。免疫組織化学および特殊染色では,結節辺縁部の紡錘形細胞は,ビメンチンがびまん性に細胞質に陽性,α-SMA が一部で細胞質に陽性,S-100 と CD34 は陰性,浮腫状の間質部で alcian blue が陽性であり,虚血性筋膜炎と診断した。本疾患は,高齢者や寝たきり患者に多く健常成人にはまれであるが,近年若年者での報告例が散見されている。本疾患の診断には,慢性的な圧負荷のエピソードがないか問診時に注意することと,病理組織学的検査が重要である。(皮膚の科学,24 : 14-19, 2025)